夏風邪、思っているより厄介かも!暑い季節を乗り切るために
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夏にも風邪をひくことがあります。
冬の風邪は低温・乾燥を好むウイルスや細菌(例:インフルエンザウイルスなど)によって起こりがちですが、夏風邪は高温多湿の環境で活発になるウイルス感染が主な原因です。
そのため梅雨の時期から夏にかけて流行しやすく、注意が必要です。
実は冬より長引く?厄介な夏風邪の特徴とは
夏風邪の代表的な症状は以下になります。
- 37.5℃くらいの微熱
- のどの痛みや激しい咳
- 頭痛、下痢など(夏風邪ウイルスはのどや腸で増えるため)
- 頭痛
- 鼻水
- 悪寒
- 倦怠感
夏風邪は、なかなか治りにくいと言われることがあります。
それはいったいなぜなのでしょうか? 理由を見ていきましょう。
ウイルス特性
夏風邪の原因となるウイルスの多くは、腸内で増殖します。
腸内で増殖したウイルスは、体外に排出されるまでに時間がかかるため、症状が長引く傾向があります。
感染経路
冬風邪は飛沫感染が主になりますが、夏風邪は「経口・接触感染」が多いとされています。
子どもから大人へうつるケースも多いのですが、子どもとの接触機会が少ない大人にも感染する恐れがあります。
職場の共用パソコンやエレベーターのボタン、電車のつり革など、意外な場所でウイルスに触れていることもありうるのです。
夏という環境特性
猛暑による食欲不振や寝苦しさから寝不足や疲労、室内外の温度差によって自律神経が乱れると、免疫力が下がりやすくなります。
さらに、冷たい飲み物の取りすぎやストレスといった要因も重なることで、ウイルスへの抵抗力が落ち、感染しやすい状態になります。
その結果、自身の免疫でウイルスを排除するのに時間がかかり、回復までに時間を要してしまうのです。
十分な休養と栄養補給ができないと夏風邪がこじれて長引くこともあるため、油断は禁物です。
夏に広がる3大ウイルス
夏に流行しやすい主な風邪ウイルスには、エンテロウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルスの3種類が挙げられます。
これらはそれぞれ、ヘルパンギーナ、手足口病、咽頭結膜熱(プール熱)など、特に5歳以下の乳幼児に多い夏風邪の原因となるウイルスです。
大人に比べ体力や抵抗力の弱い小さなお子さんは夏風邪にかかりやすいので注意が必要です。
また重症化はまれですが、ウイルスによっては急性脳炎や心筋炎などの合併症を起こすことも報告されています。
このように油断できない一面もあるため、流行時期にはしっかり対策を取りましょう。
では、夏風邪の主な原因ウイルスについて見てみましょう。
エンテロウイルス(腸管ウイルス) 代表:エコーウイルスなど
主な感染経路
- 経口・接触感染飛沫感染
潜伏期間
- 約3~5日
主な症状と経過
- 嘔吐、下痢発熱、喉の痛み口や手足に小さな水疱(手足口病・ヘルパンギーナの原因となる)
- 通常は1週間前後で回復し重症化はまれだが、極めてまれに急性脳炎・心筋炎などを合併することがある
治療法
- 特効薬はなく対症療法のみ
- 高熱や痛みが強い場合は解熱鎮痛薬などで症状を和らげる
- 水分・栄養を十分に補給し、安静にして体力の回復を図る
アデノウイルス(咽頭結膜熱の原因) ※夏季に乳幼児で流行するプール熱(咽頭結膜熱)の主因
主な感染経路
- 経口・接触感染飛沫感染
潜伏期間
- 約5~7日
主な症状と経過
- 39~40℃の高熱
- 喉の痛み、目の充血や痛み(結膜炎)、首のリンパ節が腫れる
- 発熱や喉・目の症状は1週間程度で改善するが、まれに重症肺炎を引き起こすことも
※大人にも感染しうるため注意嘔吐、下痢
治療法
- 有効な抗ウイルス薬がなく対症療法のみ
- 高熱時は解熱剤で熱を下げ、水分補給を十分に行う
- 目の症状には必要に応じて点眼薬が用いられる
- 症状が治まるまでは安静に過ごす
コクサッキーウイルス(エンテロウイルスの一種) 代表:コクサッキーA群 ※夏季に乳幼児で流行するヘルパンギーナ(急性咽頭炎)の主因
主な感染経路
- 経口・接触感染飛沫感染
潜伏期間
- 約2~5日
主な症状と経過
- 突然の高熱(38℃以上)
- 喉の奥に水疱が複数でき強い喉の痛み
- 発熱は2~4日で下がり、1週間ほどで回復する
- 手足口病の原因にもなる(症状は上記エンテロウイルス欄参照)
- まれに高熱による熱性けいれんを起こすほか、髄膜炎や心筋炎を合併することもある
治療法
- 特効薬はなく対症療法のみ
- 喉の痛みが強い間は飲食物は刺激の少ないものを選ぶ
- 解熱剤の使用や十分な水分・栄養補給
- 安静にして体力の回復を待つ
夏風邪にかからないための予防策とかかってしまった時の対処法

夏風邪にかからないためには、「ウイルスをつけない」ことが予防の第一原則です。
予防策をご紹介いたしますので、日ごろからうまく取り入れるようにいたしましょう。
手洗い・うがいの徹底
- 外出先から帰ったら石けんで手洗い・うがいをして喉の粘膜を清潔に保つ
- アルコール消毒も有効
- 特に小さなお子さんのいる家庭では、お世話をする大人もしっかり手洗いを行う
タオルや食器の共用を避ける
- 家族間でもタオルや食器の共用は避け、使用後はしっかり洗浄・乾燥させる
- 衣類やタオル類は日光に当てて十分乾かす(殺菌効果が高まる)
プール利用時の注意
- プールの後にシャワーで体を流し、目を洗浄、うがいをする
- プール以外でも、人が多く集まる場所では流水で手洗いし、目や鼻をこすらないようにする
体調管理と予防接種
- 日頃からバランスの良い食事・十分な睡眠をとり、免疫力を維持する
- 夏バテしないよう規則正しい生活を心がける
- マスクの着用や換気も、咳やくしゃみでのウイルス拡散防止に有効
- 風邪と症状が似ている感染症(インフルエンザなど)のワクチン接種も適宜検討する
万が一夏風邪にかかってしまった場合、原因ウイルスに直接効く薬はなく、治療の基本は症状に応じた対症療法になります。
例えば、つらい発熱には解熱剤、喉の痛みには鎮痛薬やのど飴、咳には咳止めシロップといった具合に、症状を和らげる薬を使います。
水分をこまめに補給し、冷房などで室温を快適に保ちながら安静に過ごすことが大切です。
ウイルス性の風邪に抗生物質は効きませんので、細菌による二次感染が疑われない限り不用意に抗生剤を飲む必要はありません。
栄養と睡眠を十分にとり、体の免疫力がウイルスに打ち勝つのを助けてあげましょう。
夏風邪を引いたと思ったら。受診のタイミング
夏風邪の多くは軽症で自然に治りますが、次のような場合は早めに医療機関を受診してください。
高熱が続く
発熱が5日以上続く場合や、38℃以上の熱が下がらない場合は受診を検討しましょう。
特に生後3か月未満の赤ちゃんが38℃以上の熱を出したときは重症化しやすいので、すぐ小児科を受診してください。
水分が取れない・嘔吐が続く
食欲不振がひどく水分も受け付けず、おしっこが出ていないときは脱水の恐れがあります。
また嘔吐が何度も続くときも要注意です。
ぐったりして顔色が悪い場合は早めに受診しましょう。
激しい咳・呼吸困難
激しい咳が続き寝られない、ゼーゼーと喘鳴がする、肩で息をするような呼吸の苦しさが見られる場合は、気管支炎や肺炎を起こしている可能性があります。
夜間でも呼吸が辛そうなときは救急受診を検討してください。
けいれん・意識障害
高熱に伴いけいれんを起こした、呼びかけても反応が鈍く意識がもうろうとしている、といった場合は緊急です。
ためらわずに救急車を呼びましょう。
特に小児の熱性けいれんは夏風邪でも起こることがあるため慌てず対応し、発作が治まったら受診してください。
以上のような症状が見られなくても、「様子がおかしい」「治りが遅い」と感じる場合は早めに医師に相談してください。
高齢の方や持病のある方も、夏風邪から肺炎などを併発するケースがありますので、念のため早めに受診するほうが安心です。
夏を快適に過ごすための習慣~体調と冷房の上手な付き合い方~
暑い夏を元気に乗り切るには、日頃の生活習慣や冷房の使い方に工夫が必要です。
室内外の温度差で自律神経が乱れ、体調を崩しやすくなったり、エアコンの風で喉や鼻の粘膜が乾燥すると免疫力が低下し、ウイルスが体内に入り込みやすくなります。
ここでは夏風邪を予防しつつ快適に過ごすためのポイントを紹介します。
エアコンの温度・湿度設定に注意する
冷房は効きすぎも禁物です。
室温は26~28℃程度、湿度を50~60%程度を目安に調整しましょう。
人によって寒く感じない程度に、外の気温との差は5℃以内に抑えるのが理想です。
エアコンで空気が乾燥しすぎる場合は、濡れタオルや観葉植物を置いて調整しましょう。
体を冷やしすぎない工夫をする
冷気が直接当たると体が冷えすぎてしまいます。
エアコンの風向き調整や扇風機やサーキュレーターを併用して冷たい空気を拡散させると、エアコンの設定温度を上げても快適に感じられます。
寒さを感じる時は上着を羽織る、就寝時には薄手のタオルケットを使う、タイマー機能で寝冷えを防ぐなどの工夫が有効です。
栄養と水分をしっかり補給する
暑さでそうめん等のあっさりした物ばかり食べていませんか?
夏こそ良質なたんぱく質(免疫細胞の材料)を含むバランスの良い食事を心がけましょう。
肉や魚、大豆製品なども適度に摂り、スタミナをつけてください。
汗をかきやすい夏場は特にこまめに水や麦茶を飲み、脱水を防ぐとともに喉の粘膜の保護につとめましょう。
質の良い睡眠を確保する
寝苦しい夜が続くと睡眠不足になり、疲労が抜けず免疫力も低下します。
就寝前に室温を調整し、照明を落としてリラックスできる環境を整えましょう。
湯船に浸かって体を温めると、副交感神経が働いて寝つきが良くなります。
テレビやスマホの光は眠りを妨げますので、寝る前はなるべく避け、十分な睡眠時間を確保してください。
体がしっかり休まればウイルスも負けにくくなり、夏を元気に過ごせるでしょう。
暑い季節を上手に乗り切り、快適で健やかな夏をお過ごしください。
参考文献
- 治りにくい「夏風邪」にご注意を! 山梨県厚生連健康管理センター
- 夏風邪はなぜ引くの?長引く原因と治し方のポイントを知ろう! 消化LIFE-健康のお悩みや生活の不安を解決する知って得するブログ
- 夏かぜ(夏型感染症:手足口病、咽頭結膜熱、ヘルパンギーナ) 大阪市
- 風邪症状と受診の目安 草津の小児科【といやまこどもクリニック】
- 「夏風邪」をひかない生活を オムロン ヘルスケア