(c) Nishiumeda city clinic

健康コラム

Health column

Homeコラム婦人科PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とは?症状と対策を徹底解説

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とは?症状と対策を徹底解説

【大阪/梅田】大阪駅前の総合内科クリニック|西梅田シティクリニックがお届けする健康情報。
是非、みなさまの健康管理にお役立てください。

「多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせい卵巣症候群)」と聞いたことはありますか?
むずかしい漢字が並んでいて、よくわからないと思っている方も多いかもしれません。
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とは、排卵が困難になる病気です。
本記事では、PCOSの原因や症状、治療法について解説します。
PCOSに該当しそうな症状がある場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な処置を受けましょう。

PCOSとは何か?基本的なメカニズムを理解しよう

PCOS(polycystic ovarian syndrome)とは、多嚢胞性卵巣症候群です。
卵巣で男性ホルモンが作られることで、排卵が困難になる疾患です。
一般的に「多嚢胞」という場合、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」を指します。
多嚢胞性卵巣には、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と多嚢胞性卵巣形態(PCOM)と呼ばれる2つの病態があります。

多嚢胞性卵巣症候群
(PCOS)
多嚢胞性卵巣形態
(PCOM)
特徴卵巣に小さな卵胞が多くあり、排卵障害や月経異常がともなう卵巣に多嚢胞性卵巣があるが、排卵異常や月経異常がみられない
診断基準下記の3つを満たす
・月経異常
・卵巣に多嚢胞性卵巣がある
・血中の男性ホルモン値が高い、もしくはLH高値でFSHより高い
月経や排卵が規則的にある

PCOSは、女性の20〜30人に1人の割合でみられる病気であり、多くの卵胞があることから、多嚢胞性卵巣と呼ばれているのが特徴です。
排卵には脳にある下垂体から分泌されるFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体ホルモン)と呼ばれる2つのホルモンが関わっています。
PCOSになるとこれらのホルモンのバランスが乱れ、LHが過剰分泌され、排卵が困難になるのが特徴です。
また、血糖値を下げる働きをもつインスリンもPCOSに関与しており、インスリン抵抗性があると、男性ホルモンが増加します。

PCOSの主な症状とは?月経異常から不妊まで

PCOSの主な症状は以下のとおりです。

  • 月経異常
  • にきび
  • 肥満
  • 多毛
  • 不妊
  • メタボリックシンドローム
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 心血管系合併症

月経異常になると、月経周期が長くなったり、規則性がなくなったりします。
また、なかには月経が3ヶ月以上みられなくなるケースもあります。
これはホルモンバランスが乱れ、周期的に排卵が起こらなくなることが原因です。
月経周期の正常な期間は25〜38日間です。

上記の期間より短かったり長かったりする場合や、不正出血がある場合は、排卵障害が起こっている可能性があります。
そのため、速やかに婦人科を受診し、専門の医師に相談してください。

早期発見が鍵!PCOS診断の流れと検査方法

PCOSを診断するための検査方法としては、超音波検査血液検査の2種類が挙げられます。

超音波検査
超音波検査は10mm未満の小さな卵胞の数を確認し、片側の卵巣に10個以上の小卵胞がある場合は、PCOSを発症しているかもしれません。
血液検査
血液検査では、FSHとLHを測定します。
通常これらを測定する場合、月経中に採血する必要がありますが、月経周期の長い方や月経がこない患者さんの場合はそれ以外のタイミングで測定することもあります。
上記以外には、男性ホルモンであるアンドロステジオンやテストステロンを測定することもあります。

日本産科婦人科学会の3つの診断基準は、以下のとおりです。

  • 月経異常
  • 片方の卵巣に小卵胞が10個以上ある
  • 男性ホルモンが高値であり、LH高値でFSHより高い


患者さんの体型によっては基準が異なることがあり、病歴や基礎疾患などを考慮して総合的に判断することがあります。

PCOSの治療法はおもに薬物療法


PCOSの治療法は、妊娠の希望の有無によって変わるのが特徴です。
妊娠を希望しない場合、月経不順を放置すると、子宮体がんのリスクが高くなります。
無排卵や無月経が続く場合は、ホルモン療法が必要です。
治療をする際は、7〜21日間女性ホルモンの薬を内服します。
内服終了後、数日で月経が起こります。
妊娠を希望する場合の治療法は以下の3つです。

耐糖能異常に対する治療

血液検査でインスリン抵抗性がある患者さんには、糖尿病の治療薬であるメトフォルミンで治療する必要があります。
メトフォルミンを服用するとインスリンの過剰な分泌が抑制でき、卵巣で男性ホルモンが抑えられるため、卵巣内のホルモン環境が改善できます。
その結果、排卵しやすくなる可能性があるでしょう。

排卵誘発

排卵誘発剤のクロミフェン(経口薬)を服用すると、約50%が排卵します。
クロミフェンが無効になると、ゴナドトロピン療法を実施し、排卵誘発をします。
排卵誘発剤によって一度にすべての卵胞が大きくなり、排卵しようとすると卵巣が腫れ上がり、胸やお腹に水がたまることがあるでしょう。
重症化すると、腎不全や血栓症などを併発することがあり、場合によっては入院が必要です。

腹腔鏡下卵巣多孔術

腹腔鏡下卵巣多孔術とは、卵巣の表面に複数の穴を開け、排卵を促す手術です。
心身に負担がかかるものの、成功すると自然に排卵ができるようになります。
効果の持続期間としては6〜12ヶ月程度です。

生理不順かも・・・と思ったらなるべく早めに婦人科へ行こう

PCOSになり、生理不順が起きても放置してしまい、不妊になってしまってから医療機関を受診するケースがあります。
生理周期には個人差があり、2〜3年は生理周期が安定しないことがあるものの、それ以上続く場合は病気になっている可能性があります。
PCOSを放置すると、不妊のリスクだけでなく、子宮体がんのリスクが高くなることもあるでしょう。
25〜38日周期で生理が来ない場合には、できるだけ早く婦人科に相談してください。