性病の知識

性感染症がコロナ禍で急増した理由

赤松 敬之(あかまつ たかゆき)

新型コロナウイルス感染症が猛威をふるった時期、性感染症の感染者数は減ったかに思われましたが、実際は増加していました。
その理由は、性病検査できる機会が減ってしまったことに加え、感染者の性病に関するリテラシーが不足していたことが関係しています。
性感染症は、感染者が正しい知識を持って予防策を実行しない限り、防止することはできないのです。

本記事では、コロナ禍で性感染症患者が増加した理由性感染症を防止する方法を解説します。健康的な生活を送るために、正しい知識を身につけ、性感染症を予防していきましょう。

人との接触が減ったコロナ禍で性感染症はなぜか増えている

新型コロナウイルス感染症が流行した2020年は人と接触する機会が減ったため、感染者数が減ったと思われていました。
しかし、アメリカでは、性感染症の感染者が増加したとの見方がされています。その理由は、多くのクリニックにて、症状を抱える患者さんや即日治療が必要な患者さんを優先させるようになったからです。

性感染症によっては、感染しても症状がなかなか出ないケースがあります。この場合、検査が受けられず、放置する状態となり、その間に感染状況が悪化するケースに発展するおそれがあります。
また、検査キットの不足が起きたことも感染者数が増加した理由の1つです。とくに淋病とクラミジアの検査キットが不足したため、これらに感染する患者さんが増加しました。

性感染症は海外から流入しているわけではない

新型コロナウイルス感染症が世界的に流行したものの、性感染症が海外から流入しているわけではありません。
国内では、梅毒の感染者数が増加しています。
国立感染症研究所によると、2021年における梅毒感染者数は7,823人だったのに対し、2022年には12,966人へ増加しています。

もともと梅毒は希少疾患だったため、海外から来た外国人によって広まってきたのではないかと推察されました。しかし、実際は海外からの人の流入がない時期に増えていたため、この説明は否定されています。
国立感染症研究所の発表によると、男性感染者の4割が性風俗利用歴があり、女性の4割が性風俗従事歴があるとの結果が出ています。

「自分は大丈夫」と思っていませんか?

「自分は大丈夫」「自分に限って性感染症にかかるわけがない」
性感染症にかかった患者さんの多くはこのように油断した結果、病気にかかるケースがあります。

女性の場合、付き合っているパートナーに異変があったことに気づいても、雰囲気に流され避妊せずに性行為をしてしまい、性感染症に罹患するケースがあります。
また、梅毒の場合、通常は感染後3〜6週間程度の潜伏期間を経て症状が出ますが、人によっては無症状のままの場合もあるでしょう。そのため、気づかずに放置してしまい、症状が悪化して初めて感染していることに気づくケースもあるのです。

男性の場合、特定のパートナーだけでなく、マッチングアプリやSNS、性風俗で出会った女性と性行為をすることで感染するケースがあります。

男女ともに共通するのは、性感染症の症状が出ても、医療機関の受診をせずに放置してしまうケースがあることです。

この背景には、検査や受診に対して心理的な抵抗があることが関係しています。
「病院を受診すると、周りに性感染症に感染していることがバレて恥ずかしい」という気持ちが芽生え、行動することができなくなるのです。

その結果、インターネットを頼り、個人輸入で入手できる抗菌薬を服用するケースがあります。
しかし、市販で販売されている薬は偽薬だったり、衛生面に配慮されていないケースがあるたりするため、効力がない場合があります。
また、かえって体調が悪化し、健康被害を被るおそれがあるため、個人輸入による市販薬の服用はおすすめできません。
少しでも異変を感じた場合は、速やかに医療機関を受診し、検査を受けましょう。

正しい知識をつけて、しっかり定期的な検査を受けよう

性病は、正しい知識を身につけなければ感染する可能性のある病気です。性行為をする際は、かならずコンドームをつけ、感染予防をしましょう。
また、不特定多数の人と性行為すると、コンドームをつけていても感染を防止できないケースがあります。
そのため、性行為をする際は、信頼できるパートナーのみとするようにしましょう。

万が一、性行為後に自身や大事なパートナーが異変を感じたら、速やかに医療機関を受診し、性病検査を受けてください。
性病を放置すると、気づかないうちに症状が悪化し、最悪の場合、死に至るケースがあります。
自分だけでなく、大事なパートナーを守るためにも、性感染症の予防知識を持ち、行動に移すことが大切です。
もし大事なパートナーが性感染症に関する知識が欠けている場合は、自身が正しい知識をレクチャーしてあげることも重要です。

性感染症とは無縁の健康的な生活を送るために、定期的な検査をおこない、健康管理に努めていきましょう。

監修医師紹介
赤松 敬之(あかまつ たかゆき)
赤松 敬之(あかまつ たかゆき)
医療法人 星敬会 理事長
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