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食道アカラシア

食道アカラシアとは

食道アカラシアとは、食道の運動機能に障害が生じ、飲食物が胃にうまく送り込まれなくなる病気です。
通常、食道は口から入った食べ物や飲み物を「蠕動運動」という波のような筋肉の動きで胃へ運びます。
また、食道と胃の境目にある筋肉の輪は普段は閉じていますが、飲み込むタイミングでゆるみ、食べ物を胃に通します。
しかし、食道アカラシアではこの蠕動運動が低下し、下部食道括約筋がうまく弛緩しなくなるため、食べ物や飲み物が食道内にとどまってしまいます。
病名の「アカラシア」はギリシャ語で「決してゆるまない」ことを意味し、その名のとおり筋肉の弁が開かなくなる状態を指します。
原因不明のまれな疾患であり、有病率は約10万人に1人程度と報告されています。
好発年齢は若年~中年成人ですが、どの年代でも発症しうることが知られています。
なお、食道アカラシアそのものは良性の病気ですが、長年放置すると食道がんの危険因子の一つになることが指摘されています。
早期発見・適切な治療により、症状の改善と合併症予防が期待できます。

食道アカラシアの症状

食道アカラシアの主な症状は、飲み込みにくさと食後の胸のつかえ感です。
食べ物や飲み物がスムーズに胃に落ちないため、胸の中央あたりが詰まったような不快感を覚えます。
この飲み込みにくさは固いものだけでなく、水やお茶など液体でも起こるのが特徴です。
また、ストレスがかかった時や早食いをした時、あるいは冷たい食べ物を摂った時に症状が悪化しやすいことも知られています。
症状が進行して食道内に食べ物が長く停滞するようになると、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
十分に食事が摂れない状態が続くと体重減少に至る場合もあります。
食道内にたまった内容物が逆流するため、げっぷや胸やけ、さらには胸痛を感じることもあります。
就寝中など横になっている時に胃酸や未消化の食物が喉元まで逆流し、むせたり咳き込んで目が覚めることもあります。
誤って胃内容物が気管に入ってしまうと、誤嚥による肺炎を起こす危険もあります。
このように食道アカラシアの症状は多彩ですが、胃食道逆流症と似た症状を示すこともあり、胃酸を抑える薬を飲んでも改善しない場合には本症が隠れている可能性があります。

食道アカラシアの原因

残念ながら、食道アカラシアの明確な発症メカニズムや原因はまだ解明されていません。
食道の壁には飲食物の蠕動運動と括約筋の開閉を調節する神経のネットワークがあり、アカラシアではこれら食道の神経細胞が何らかの理由で障害・減少することがわかっています。
しかし、なぜ神経が障害されるのかは明らかになっておらず、現時点では特定の誘因や生活習慣との関連性は確認されていません。
一部の研究では自己免疫の関与や遺伝的要素の関与が示唆されていますが、決定的な結論には至っていません。
つまり、ストレスや食生活の偏りなどが直接の原因となるわけではなく、現代医学でもまだ原因究明中の病気です。
※南米ではシャーガス病という寄生虫感染症によって類似の症状を呈することがありますが、日本での発生は極めて稀です。

食道アカラシアの治療

食道アカラシアに対する治療の目的は、固く閉じて開かなくなった下部食道括約筋をゆるめてあげることにあります。
現在、主な治療法は大きく3つに分類され、患者さんの症状の程度や全身状態に合わせて選択されます。

薬物療法

下部食道括約筋の圧力を下げる作用のある薬を内服します。
代表的にはカルシウム拮抗薬や硝酸薬を用いて筋肉を弛緩させ、症状の改善を図ります。
根本的な治療ではありませんが、比較的負担が少なく、一部の患者さんでは有効です。
また、食後すぐに横にならない、枕を高くして寝る、少量ずつゆっくり食べる等の生活指導も行われ、胃内容の逆流を防ぐ工夫をします。

内視鏡による治療

胃カメラを使った低侵襲の治療法です。
1つは内視鏡的バルーン拡張術で、内視鏡に挿入したバルーンを狭くなった下部食道括約筋のところで膨らませ、筋肉の一部を裂くことで通り道を広げます。
もう1つは近年開発された内視鏡的筋層切開術POEMです。
POEMは口から挿入した内視鏡で食道の内側から筋肉の層を直接切開する最新治療で、2016年から保険適用となりました。
体への負担が少ないにもかかわらず1回の治療で高い効果が得られることが報告されており、国内外で広く行われています。
内視鏡治療はいずれも開腹せずに行える利点があり、多くの患者さんで症状の大幅な改善が期待できます。

外科手術

従来から行われてきた根治的治療です。
代表的な手術は、食道と胃のつなぎ目にある筋肉を切って開放し食べ物の通過を良くするヘラー筋層切開術と、胃酸の逆流を防ぐために胃の噴門部を一部縫い寄せるドール噴門形成術を組み合わせたヘラー・ドール手術です。
現在はお腹に小さな穴を開けて行う腹腔鏡下手術が主流で、開腹手術より体への負担が軽減されています。
手術により症状は大きく改善しますが、術後は胃酸の逆流症状が起こり得るため、必要に応じて胃酸を抑える薬を継続することもあります。
最近は前述のPOEMの登場により、患者さんの状態によっては外科手術に代わって内視鏡治療が選択されるケースも増えています。

※なお、内視鏡的治療の一環としてボツリヌス毒素注射を行う方法もあります。内視鏡で下部食道括約筋にボツリヌス毒素を注射し、一時的に筋肉を麻痺させてゆるめる治療ですが、効果は数ヶ月程度と一過性で再発しやすいことから、日本では保険適用がなく一般的ではありません。

早期発見のポイント

食道アカラシアは希少疾患であるため、症状が出ても見過ごされたり、他の病気と間違われてしまうことがあります。
実際、胃食道逆流症と診断され治療されていた患者が、薬の効かない逆流症として精密検査を受けた結果、実は食道アカラシアだったという例も報告されています。
症状が長引く場合は自己判断せず、早めに専門医を受診することが肝心です。


早期発見のポイントは次のとおりです。

  • 嚥下困難や胸のつかえ感が続く場合
    数日~数週間以上にわたり「飲み込みづらい」「胸につかえる感じ」が続くようならば、早めに消化器内科などを受診しましょう。
    他の病気(食道炎や食道がん等)による狭窄の可能性もあるため、専門的な検査で原因を調べることが大切です。
     
  • 胃酸の薬で良くならない場合
    市販薬や処方薬の胃酸を抑える薬を飲んでも症状が改善しない場合、胃食道逆流症ではなく食道アカラシアが隠れている可能性があります。
    特に水さえ飲みにくいと感じる場合は、食道の運動障害を疑って医師に相談してください。
     
  • 夜間の誤嚥や体重減少
    夜中にむせる、咳き込むといった誤嚥症状がある場合や、原因不明の体重減少が見られる場合も注意が必要です。
    症状が進行している可能性があるため、放置せず検査を受けましょう。
    適切な治療により食事がとりやすくなれば、栄養状態の改善や誤嚥性肺炎の予防につながります。

予防の基礎知識

現時点で食道アカラシアそのものを予防する方法は確立されていません。
原因が明らかでない以上、発症そのものを食い止める手段は見つかっていないのが現状です。
ただし、日常生活の工夫によって症状の悪化や合併症を予防・軽減することは可能です。
例えば、食後すぐに横にならないようにしたり、食事はよく噛んでゆっくり摂るように心がけましょう。
ストレスを上手にコントロールし、極端に冷たいものの過剰摂取や暴飲暴食を避けることも有用です。
これらは食道アカラシアの症状悪化を防ぐだけでなく、胃食道逆流や誤嚥の予防にもつながります。

また、前述のように食道アカラシアは食道がんのリスク因子でもあります。
そのため、治療後も定期的に経過観察を受け、必要に応じて内視鏡検査で食道の状態をチェックしてもらうことが望ましいでしょう。
継続的なフォローアップによって、万が一合併症や悪性の変化が生じた場合でも早期に発見・対処することができます。
現状では発症を未然に防ぐ方法はありませんが、適切な治療とセルフケアによって安心して日常生活を送ることができる病気です。
不安なことがあれば主治医と相談し、正しい知識に基づいて管理していきましょう。

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