2025.08.25
コラム

海外で流行中の「麻疹」とは?事前に予防できること

近年、海外での麻疹(はしか)の大規模な流行が報告されており、日本国内でも海外から持ち込まれた麻疹の感染事例が増加しています。
麻疹は非常に感染力が強く、適切な予防策を取らなければ、思わぬ感染につながる恐れがあります。
​本記事では、麻疹の概要、症状、感染経路、世界および日本における流行状況、そして事前にできる予防策(トラベルワクチンの活用)について、一般の方にもわかりやすく解説します。​
万が一感染してしまった場合の対処法についても紹介しますので、正しい知識を身につけて麻疹から身を守りましょう。

 

ニュースで見聞きする麻疹(はしか)とは?

麻疹(はしか)は麻疹ウイルスによって引き起こされる急性の感染症です。
初期症状は風邪に似ており、発熱、咳、鼻水、目の充血などが現れます。
一度、熱は下がることもありますが、数日後には39℃以上の高熱とともに全身に赤い発疹が広がるのが特徴です。
発疹は耳の後ろや顔から始まり、次第に体や手足へと広がっていきます。

発疹と高熱の期間は3~4日程度続き、その後熱が下がると回復に向かいます。
通常、1~2週間ほどで症状は落ち着きますが、肺炎や中耳炎などの合併症を引き起こすことがあり、約1,000人に1人の割合で脳炎を発症するとされています。

さらに、先進国においても麻疹患者の1,000人に1人が死亡するとの報告があり、決して軽視できない病気です。

 

強い感染力を持つ麻疹ウイルス

麻疹は、飛沫感染(せきやくしゃみのしぶきを吸い込む)だけでなく、空気感染(ウイルスが空中を漂い、遠くまで広がる)を引き起こすほど感染力が強いのが特徴です。
そのため、患者と直接接触しなくても、同じ空間にいるだけで感染する可能性があります。
特に、麻疹ウイルスに対する免疫(抗体)を持っていない人が感染すると、ほぼ100%発症すると言われています。
また、潜伏期間(感染から症状が現れるまでの期間)は10日間とされ、発症の2日前から発疹が出て数日経つまでの間、ウイルスを排出し、周囲の人に感染させる恐れがあります。

 

予防が最も重要

現時点では、麻疹に対する特効薬(ウイルスを直接倒す薬)は存在せず、発熱や咳などの症状を和らげる対症療法が中心となります。
そのため、麻疹にかからないよう事前に予防することが最も重要になります。

 

麻疹の流行経緯

かつて日本では、麻疹が町都市のように流行していました。
2000年代後半からワクチンの集団接種が強化され、患者数は大幅に減少しました。

特に平成19~20年(2007~2008年)には、10代~20代を中心に大流行が発生し、2008年には年間11,000人以上の麻疹患者が報告されました。
この事態を受け、政府は中学生・高校生世代を対象とした追加ワクチン接種(5年間の時限措置で計2回の接種)を実施し、若年層の免疫を強化しました。
その結果、2009年以降は患者数が激減し、2015年にはWHO(世界保健機関)から「麻疹排除状態」の認定を受けるまでになりました。

 

「麻疹排除状態」とは?

麻疹の排除状態とは、「その国で少なくとも3年以上、自国由来の麻疹ウイルスの持続的な感染伝播がない状態」を指します。
日本は定期予防接種などの普及などにより、国内での麻疹流行を一時的に終息させることに成功しました。

 

近年の麻疹再流行の背景

近年においては、海外での大規模な流行とワクチン未接種者の存在が関係しています。
世界的には2018年頃から各国で麻疹患者が増加し、2019年にはアジアや欧米で大きな流行が報告されました。
日本でも、2019年の報告患者数は700人以上となり、排除認定後では最多の流行となりました。
その多くは、フィリピンやウクライナなど麻疹が流行している国からの帰国者やその周囲で発生したケースでした。

また、日本国内でも、年代によって予防接種歴に偏りがあることが指摘されています。
特に1970~80年代生まれの人々は、ワクチン未接種または1回接種にとどまっている場合があり、十分な免疫を持たない人が一定数存在します。
こうした背景から、コロナ禍の影響で一時的に麻疹患者は激減したものの、海外渡航の再開に伴い、再び感染が持ち込まれ、日本国内で広がるリスクが高まっています。
実際、大阪府では2023年に関西空港を起点とした麻疹の感染事例が報告され、公共交通機関や商業施設を利用した多数の人々に注意喚起が行われました。

 

麻疹には特効薬がない?予防するには?

麻疹を防ぐ最も効果的な方法は、ワクチン接種による予防です。
前述のとおり、麻疹ウイルスを直接退治する治療薬は存在しません。
そのため、「感染しないようにする」ことが何より重要です。

幸いなことに、麻疹には生ワクチンという非常に高い効果効果を持つワクチンがあります。
日本では麻疹と風疹の混合ワクチン(MRワクチン)が定期接種として制度化されており、1歳と小学校入学前の2回の接種が推奨されています。
受けられるよう制度化されています。
この2回の接種により、95%以上の人が麻疹に対する免疫を獲得できるとされています。
しかし、国内で麻疹の流行が減少したことで、「自分は麻疹の予防接種を受けたか覚えていない」という大人も増えているのも事実です。
特に、海外で麻疹に感染した患者の多くは20~40代の成人であり、その大半が過去にワクチンを2回接種していなかったと報告されています。

 

海外渡航前にワクチン接種を確認しよう

海外旅行や出張を予定している場合は、母子手帳などで自分の予防接種歴を確認し、必要あれば追加接種を検討しましょう。
厚生労働省検疫所の「FORTH」では、渡航前に推奨される予防接種について情報提供しており、麻疹に関しても以下のように推奨しています。
「明らかに麻疹にかかったことがない人、麻疹ワクチンを接種したことがない人、1回しか接種していない人、接種歴が不明な人にはワクチン接種をおすすめします。」
特にアジアやアフリカなど麻疹が流行している地域へ行く場合は要注意です。
たとえ日本国内で麻疹が流行していなくても、渡航先では麻疹ウイルスが身近に存在する可能性があります。
海外で麻疹に感染してしまうと、現地での治療費の負担や旅行の中断を余儀なくされるだけでなく、帰国後に周囲へ感染を広げてしまうリスクもあります。
こうした事態を防ぐために、出発前にトラベルワクチンとして麻疹の予防接種を受けておくことが重要です。

 

もし感染してしまったら?

十分注意していても、麻疹に感染してしまう可能性はゼロではありません。
もし「麻疹かもしれない」と感じた場合は、周囲への感染拡大を防ぐとともに、自身の体調管理にも十分気を配ることが大切です。

 

自宅で療養する際の注意点

麻疹と疑いがある症状(発熱、咳、発疹など)が現れたら、すぐに学校や仕事を休み、自宅で安静に過ごしてください。
高熱が続くと体力を消耗しやすいため、十分な休養を取り、こまめな水分補給を心がけましょう。
食欲がない場合でも、水やスポーツドリンク、スープなどを摂取し、必要な水分と栄養を補給することが大切です。

 

医療機関を受診するタイミング

以下のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。

  • 高熱が続く
  • 呼吸が苦しい
  • ぐったりして元気がない
  • 意識がもうろうとしている

麻疹は放置すると肺炎や脳炎などの重い合併症を引き起こす可能性があります。
受診の際は、事前に医療機関へ連絡し、「麻疹の疑いがある」ことを伝えた上で指示を仰ぐことが重要です。

 

周囲への感染拡大を防ぐために

麻疹は非常に感染力が強いため、家族や周囲の人への感染を防ぐ対策を徹底する必要があります。
発疹が出た後は少なくとも4日間、他者との接触を控えることが推奨されています。
また、自宅内乳幼児、妊婦、免疫力が低下している人がいる場合は、より慎重な対応が求められます。
できるだけ患者を個室で休ませ、看病する人を限定するなどの工夫をしましょう。

 

正しい知識と予防で麻疹を防ぐ

麻疹は正しい知識と適切な予防策によって感染を防ぐことができます。
世界では依然として麻疹が流行している地域があり、海外旅行や国際交流が盛んな現代において、日本へ麻疹が持ち込まれるリスクは常に存在します。
だからこそ、「自分は大丈夫」と油断せず、ワクチン接種を含めた事前の対策をしっかりと行いましょう。