トランス脂肪酸とは?多い食品ランキングから体に悪い理由まで解説
トランス脂肪酸とは、植物油に水素を添加する「水素添加(硬化)」という加工処理の過程で生成される脂肪酸の一種です。マーガリン・ショートニング・ファットスプレッドなどの加工油脂製品に多く含まれています。
トランス脂肪酸を過剰に摂取すると、LDLコレステロール(悪玉)を増加させ、HDLコレステロール(善玉)を減少させることから、心臓病のリスクを高めるとされています。
【この記事でわかること】
- トランス脂肪酸とは何か、仕組みと種類
- トランス脂肪酸が多い食品ランキングTOP10
- なぜ体に悪いのか、心臓病リスクとの関係
- 食品表示の読み方、パッケージのどこを見ればよいか
- 1日の摂取上限、WHO推奨値と日本人の平均摂取量
- マーガリンは本当に「食べるプラスチック」なのか
「食べるプラスチック」という言葉を聞いたことがありますか?
必ずしもこの表現が適切とは言えませんが、トランス脂肪酸のことをこのように表現する人がいます。
というのも、トランス脂肪酸を含む食べ物を摂取することによって、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が増加し、心疾患のリスクが高まることが明らかになっています。
しかし、2012年に日本の食品安全委員会は「日本人の多くは、健康への影響を評価できるほどトランス脂肪酸を摂取していないため、通常の食生活では健康への影響は少ない」と述べたことにより、健康被害を懸念する声は少なくなりました。
ところが近年ふたたびトランス脂肪酸に関する健康への影響が不安視される風潮が高まってきました。
本稿では、トランス脂肪酸について、管理栄養士が徹底解説します!
トランス脂肪酸とは
トランス脂肪酸といえば、マーガリンやショートニングなど加工食品に含まれているイメージが強いかもしれませんが、天然に含まれているものもあります。
天然のトランス脂肪酸は、牛や羊などの反すう動物の胃の中の微生物の働きによって作られます。
そのため、牛肉・羊肉、牛乳やバターなど乳製品に含まれています。
加工食品のトランス脂肪酸は、常温の油脂を、常温で固形にするために水素を添加して作られるものがあり、この工程でトランス脂肪酸が生成されることがあります。
(消費者庁HPより)
例えば、常温で液体の植物油にこの加工をすることで、固形のマーガリンやファットスプレッドが作られます。
そしてこれらマーガリンなどを原材料に使ったパンやお菓子類にトランス脂肪酸が含まれてしまうということになります。
身体に悪いって本当?
トランス脂肪酸による健康被害の研究の多くは、脂質の多い食生活を送る欧米人を対象としたものであり、脂質摂取量の少ない日本人の場合にも当てはまるかどうかは明らかにされていません。
ただし日本人であっても、揚げ物やラーメン、パンやケーキなど脂質の高い食べ物をよく食べる人は要注意です。
トランス脂肪酸をどれくらいまでなら摂っていいの?
内閣府の食品安全委員会が発表した調査では、日本人が食品から摂っているトランス脂肪酸の1日あたりの平均量は0.7グラムであると推定しました。
これは1日の総摂取エネルギー量の0.3%に相当します。
1日のトランス脂肪酸摂取量を海外と比べてみると、
- アメリカ:5.8グラム(総摂取エネルギーの2.6%)
- EU諸国:1.2~6.7グラム(総摂取エネルギーの0.5~1.9%)
- オーストラリア:1.4グラム(総摂取エネルギーの0.6%)
諸外国と比べてみても日本人のトランス脂肪酸摂取量は少ないことが分かります。
2003年に、世界保健機関(WHO)は及び国際連合食糧農業機関(FAO)は心疾患予防のため、1日あたりのトランス脂肪酸の摂取量を、総摂取エネルギーの1%未満にするよう勧告しました。
日本人の総摂取エネルギーから考えると、トランス脂肪酸の許容範囲は約2グラムとなります。
食べ物にはどれくらいのトランス脂肪酸が入っているの?
こちらは食品安全委員会が2007年に発表した調査結果です。
様々な商品をサンプルとしている為、トランス脂肪酸の含有量には大きな差があることがわかります。
(食品安全委員会HPより)
ちなみに、こちらのグラム量は食品100グラムあたりになります。
1食分の目安として、マーガリンは10グラム、マヨネーズは12グラム程度です。
トランス脂肪酸が多い食品ランキングTOP10|日常的に食べているものに注意
トランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングなどの加工油脂を使った食品に多く含まれる傾向があります。特に、市販の菓子パン・クッキー・洋菓子・スナック菓子などは、原材料欄を確認して選ぶことが大切です。
| 順位 | 食品名 | 含有量の目安 | 注意点・補足 |
| 1位 | マーガリン・ファットスプレッド | 7〜10g/100g程度。製品により大きく異なる | パンに塗るバター代替品として広く使われます。近年は低トランス脂肪酸の製品も増えているため、成分表示を確認しましょう。 |
| 2位 | ショートニング | 10〜14g/100g程度 | 菓子パン・クッキー・フライドポテトなどの製造に使われます。市販食品に広く使われるため、原材料欄を確認することが大切です。 |
| 3位 | クッキー・ビスケット(市販品) | 製品により異なる | ショートニングやマーガリンを使用した製品に含まれる場合があります。「植物油脂」「部分水素添加油脂」などの表記に注意しましょう。 |
| 4位 | ケーキ・洋菓子(市販品) | 製品により異なる | クリームやフィリングにショートニング・マーガリンが使われる場合があります。 |
| 5位 | 市販のポップコーン・スナック菓子 | 製品により異なる | 一部の製品では、部分水素添加油脂が使われることがあります。近年は使用しない製品も増えています。 |
| 6位 | フライドポテト・揚げ物(外食・コンビニ) | 製品・店舗により異なる | 揚げ油にショートニングを使用している場合に含まれることがあります。 |
| 7位 | インスタントラーメン(一部製品) | 製品により異なる | 麺を揚げる工程でショートニングを使用する製品に含まれる場合があります。ノンフライ麺は比較的少ない傾向があります。 |
| 8位 | 植物性クリーム・コーヒーフレッシュ | 製品により異なる | 植物性脂肪を使ったホイップクリームやコーヒー用クリームに含まれる場合があります。 |
| 9位 | ドーナツ・揚げパン(市販品) | 製品により異なる | 揚げ油や生地にショートニングを使用した製品に含まれることがあります。 |
| 10位 | バター(天然由来のトランス脂肪酸) | 2〜3g/100g程度 | 牛の反芻過程で自然に生成される天然型トランス脂肪酸が含まれます。人工的に生成されたトランス脂肪酸とは種類が異なります。 |
日本では近年、食品メーカーによるトランス脂肪酸低減への取り組みが進んでいます。同じ食品カテゴリでも、製品によって含有量は大きく異なります。
食品を選ぶときは、原材料欄に「部分水素添加油脂」「ショートニング」などの表記がないか確認しましょう。
出典:日本食品標準成分表(最新版)・各製品成分表示
トランス脂肪酸はなぜ体に悪いのか|健康への影響と科学的根拠
トランス脂肪酸が体に悪いとされる理由は、血液中のコレステロールに悪影響を与えるためです。過剰に摂取すると、LDLコレステロールを増やし、HDLコレステロールを減らすとされています。
LDLを増やしHDLを減らす二重の作用がある
LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」と呼ばれ、増えすぎると動脈硬化の原因になることがあります。一方、HDLコレステロールは「善玉コレステロール」と呼ばれ、余分なコレステロールを回収する働きがあります。
トランス脂肪酸は、LDLコレステロールを増やすだけでなく、HDLコレステロールを減らすとされています。この二重の影響により、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患のリスクを高める可能性があります。
日本人でも偏った食生活には注意が必要
WHOは、トランス脂肪酸による1日の摂取エネルギーを、総エネルギーの1%未満に抑えることを推奨しています。
日本人の平均的なトランス脂肪酸摂取量は、欧米と比べると低いとされています。ただし、菓子パン・洋菓子・ファストフード・スナック菓子などを日常的に多く食べる場合は、摂取量が増える可能性があります。
トランス脂肪酸を完全にゼロにする必要はありませんが、加工食品に偏りすぎない食生活を意識することが大切です。
トランス脂肪酸の食品表示の読み方|パッケージのどこをチェックするか
日本では、食品パッケージへのトランス脂肪酸含有量の表示は任意です。そのため「トランス脂肪酸0g」と表示されている製品もありますが、表示がない製品も多くあります。
トランス脂肪酸が含まれる可能性を確認したいときは、栄養成分表示だけでなく、原材料欄も確認しましょう。
| 原材料欄のキーワード | 意味・注意点 |
| 部分水素添加油脂 | トランス脂肪酸が含まれる可能性が高い原料です。表示がある製品は、摂りすぎに注意しましょう。 |
| ショートニング | 製菓・製パンに使われる加工油脂です。クッキー・菓子パン・洋菓子などに使われることがあります。 |
| マーガリン・ファットスプレッド | 製品によりトランス脂肪酸の含有量が異なります。近年は低トランス脂肪酸の製品も増えています。 |
| 植物油脂(硬化油) | 「硬化油」と記載がある場合は、トランス脂肪酸を含む可能性があります。 |
| 植物油・サラダ油 | 水素添加していない植物油は、トランス脂肪酸がほとんど含まれないとされています。 |
トランス脂肪酸を含まない食品・代替品の選び方
トランス脂肪酸を減らしたい場合は、原材料欄に「部分水素添加油脂」や「ショートニング」が使われていない食品を選ぶことが大切です。
マーガリンの代わりにバターを使う方法もありますが、バターには飽和脂肪酸が多く含まれます。使いすぎには注意しましょう。
炒め物やサラダには、オリーブオイル・菜種油・ごま油などの植物油を選ぶ方法もあります。手作りのパンやお菓子でショートニングを使わないようにすると、トランス脂肪酸の摂取を減らしやすくなります。
また、最近は低トランス脂肪酸と表示されたマーガリンや加工食品も増えています。完全に避けることだけを目指すのではなく、食品表示を確認しながら、摂取量を減らす意識を持つことが大切です。
トランス脂肪酸の1日の摂取量|WHOの推奨値と日本人の平均
WHOでは、トランス脂肪酸の摂取量を1日の総エネルギー摂取量の1%未満に抑えることを推奨しています。たとえば、1日2,000kcalを摂取する方であれば、トランス脂肪酸は1日あたり約2g未満が目安です。
農林水産省の情報では、日本人の平均的なトランス脂肪酸摂取量はWHOの基準を下回っているとされています。そのため、通常の食生活であれば過度に心配しすぎる必要はありません。
ただし、菓子パン・洋菓子・ファストフード・スナック菓子などを毎日多く食べる場合は、摂取量が増える可能性があります。特定の食品に偏らず、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を意識しましょう。
マーガリンを使う場合も、製品によってトランス脂肪酸の含有量は異なります。毎日多量に使うのではなく、成分表示を確認しながら量を調整することが大切です。
国内での対応
トランス脂肪酸の情報開示
日本では一定要件を満たす食品には一般表示事項として「エネルギー」「タンパク質」「脂質」「炭水化物」「食塩相当量」をパッケージに表示することが義務付けられています。
そして、2011年に消費者庁はトランス脂肪酸の情報開示に関する指針を発表しました。
その内容は以下のようなものです。
①一般表示事項に定められた栄養成分の次に、「飽和脂肪酸」「トランス脂肪酸」「コレステロール」の順に表示する
②「含まない旨」「低減された旨」の強調表示ができる
これらの表示は義務ではなく、自主的に開示することの要請にとどまっており、引き続きトランス脂肪酸を含む脂質に関する情報開示が普及されていくことが期待されます。
脂質そのものに対する認識の普及
ここまでで、日本人のトランス脂肪酸の摂取量は決して多くないことが分かりましたが、日本人の死因の第2位は「心疾患」です。(2020年厚生労働省)
冒頭に、トランス脂肪酸は心疾患の原因となると記しましたが、広義では食生活そのものが心疾患の原因になりうるのです。
特に脂質のエネルギー比率は戦後の約2倍となっており、脂質そのものの摂りすぎが危惧されています。
また、文部科学省が1950年から発行している「日本食品標準成分表」は七訂となる2015年版から食品成分がより細分化され、アミノ酸、炭水化物と並んで脂肪酸の成分表が別冊で策定されました。
更に、皆さんが手にする食品のパッケージに記載される栄養成分表示に関しても、脂質や炭水化物についてより詳しく記載することが食品事業者に対し推奨されるようになりました。
左の栄養成分表示はお馴染みですが、右の栄養成分表示も最近はよく目にするようになりました。
脂質は飽和脂肪酸、n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸に分類されています。
| 飽和脂肪酸 | 乳製品やお肉など動物性食品に多く含まれる。 摂りすぎると血中総コレステロールが増加し、心筋梗塞など循環器疾患のリスクが増加する。 |
| n-3系脂肪酸 | アマニ油、エゴマ油に多く含まれる。 中性脂肪や悪玉コレステロールを減らす効果が期待できる。 |
| n-6系脂肪酸 | ごま油に多く含まれる。 コレステロールを下げる効果があるが、善玉と悪玉の両方を下げてしまうので摂り過ぎには注意。 |
n-3系脂肪酸が豊富な食品を意識して選び、飽和脂肪酸の摂取は控えめにするのがおすすめです。
トランス脂肪酸に関するよくある質問
マーガリンは「食べるプラスチック」といわれますが本当ですか?
「マーガリンは食べるプラスチック」という表現は、科学的には正確ではありません。マーガリンとプラスチックは分子構造が異なるため、同じものではありません。
ただし、かつてのマーガリンにはトランス脂肪酸が多く含まれていた製品もあり、過剰摂取による健康への影響が指摘されていました。現在は低トランス脂肪酸の製品も増えているため、原材料欄や栄養成分表示を確認して選ぶことが大切です。
トランス脂肪酸と飽和脂肪酸の違いは何ですか?
飽和脂肪酸は、バター・ラード・牛脂などの動物性脂肪に多く含まれる脂肪酸です。一方、トランス脂肪酸は、植物油の加工過程などで生成される脂肪酸です。
飽和脂肪酸もLDLコレステロールを増やすとされていますが、トランス脂肪酸はLDLコレステロールを増やすだけでなく、HDLコレステロールを減らすとされています。そのため、摂りすぎには注意が必要です。
体内に蓄積したトランス脂肪酸を排出する方法はありますか?
特定の食べ物や飲み物で、トランス脂肪酸を直接「排出する」といえる科学的根拠は、現時点では確立されていません。
大切なのは、これ以上トランス脂肪酸を摂りすぎないようにすることです。食品表示を確認し、ショートニングや部分水素添加油脂を含む食品を控えめにしましょう。あわせて、野菜・海藻・きのこ類など食物繊維を含む食品を取り入れ、バランスのよい食生活を意識することが大切です。
ごま油にトランス脂肪酸は含まれますか?
一般的なごま油は、トランス脂肪酸をほとんど含まないとされています。トランス脂肪酸は、主に植物油に水素を添加する加工処理の過程で生成されるためです。
ただし、油を高温で長時間加熱したり、揚げ油を繰り返し使ったりすると、微量のトランス脂肪酸が生成される場合があります。ごま油に限らず、油は酸化しないうちに使い切ることが大切です。
バターにもトランス脂肪酸は含まれますか?マーガリンとどちらが安全ですか?
バターには、牛などの反芻動物に由来する天然型のトランス脂肪酸が含まれています。一方、マーガリンやショートニングに含まれるものは、加工過程で生成される人工型のトランス脂肪酸です。
バターは天然型だから無制限に食べてよいわけではなく、飽和脂肪酸を多く含みます。マーガリンも近年は低トランス脂肪酸の商品が増えています。どちらか一方を過度に避けるのではなく、使用量を控えめにし、成分表示を確認して選びましょう。
いかがだったでしょうか。
トランス脂肪酸だけに着目するのではなく、脂質全体の量や塩分を控えめにすることを優先的に注意すれば、トランス脂肪酸を摂りすぎることはないでしょう。
つまり、いろいろな食品をバランス良く食べるということがあなたの健康につながります。
参考文献
- 農林水産省「トランス脂肪酸に関するQ&A」
- 農林水産省「すぐにわかるトランス脂肪酸」
- 食品安全委員会「食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価について」
- WHO「Trans fat」
- WHO「Eliminating industrially-produced trans-fatty acids from the global food supply」
- 第13巻第6号(2013)p.259-266 オレオサイエンス


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