子宮内膜症とは?原因・症状・治療法と日常生活での管理法
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子宮内膜症とは、子宮の内側の壁を覆っている子宮内膜が、子宮の内側以外の部位に発生する病気です。
本コラムでは、子宮内膜症についての基本情報やリスク要因、治療法、日常生活での管理法、不妊リスクと治療の連携について詳しく解説します。
子宮内膜症とは?特徴と発症の仕組み

子宮内膜症とは、本来は子宮の内側にのみ存在するはずの子宮内膜やそれに似た組織が、卵巣や腹膜など子宮の外側に発生する病気です。
この異所性の内膜組織も通常の子宮内膜と同じように月経周期に応じて増殖と剥離を繰り返すため、体外に排出されずにその場で出血を起こします。
その結果、炎症や癒着が生じ、強い月経痛や骨盤内の慢性的な痛み、不妊の原因となることがあります。
近年では、働く世代の女性や出産年齢が高くなっている女性に増えていることも報告されており、ライフステージに大きく影響する疾患として注目されています。
発症年齢は20〜40代が多いですが、それ以降も続くことがあるため注意が必要です。
子宮内膜症の主な症状とリスク要因
| 月経痛 | 市販の鎮痛薬が効きにくく、日常生活に支障が出るほどの痛み。 |
|---|---|
| 骨盤痛 | 月経時以外にも下腹部や腰部に持続的な痛みを感じる。 |
| 性交痛 | 性交時に奥に響くような痛みが生じ、生活の質を下げる。 |
| 不妊 | 卵管の癒着や卵巣機能の低下が原因で妊娠が難しくなる。 |
これらの症状がある場合、婦人科での早めの相談が望まれます。
また、発症リスクを高めるとされる要因には以下が挙げられます。
- 初潮の年齢が早い(生涯の月経回数が増える)
- 月経周期が短い(28日未満)
- 月経期間が長い(7日以上)
- 家族に子宮内膜症の既往がある
- 出産経験がない、妊娠回数が少ない
自分が当てはまる項目が多いほどリスクは高まるとされており、強い月経痛や生活への影響がある場合は受診を検討しましょう。
子宮内膜症の原因と考えられるメカニズム
子宮内膜症の発症原因は完全には解明されていませんが、いくつかの仮説があります。
逆行性月経
本来体外に排出される月経血が卵管を通じて腹腔内に逆流し、その中に含まれる子宮内膜組織が腹膜や卵巣に付着・増殖するという説です。
最も広く受け入れられています。
免疫系の異常
通常であれば体内の免疫機構が異所性内膜組織を排除しますが、免疫機能に異常があると排除できずに残り、発症につながると考えられます。
遺伝的な要因
母親や姉妹に子宮内膜症がある場合、発症リスクが高まることが知られています。
環境的な要因
エストロゲン作用を持つ化学物質などの環境因子が、発症に関与する可能性があると報告されています。
これらの要因が単独、あるいは複合的に作用し、個々の患者によって異なる背景で子宮内膜症が発症すると考えられています。
最新の治療法と選択肢
子宮内膜症の治療法は、症状の程度や患者の年齢、妊娠を希望するかどうかによって異なります。
主な治療法は「薬物療法」と「手術療法」に分けられます。
薬物療法
- ホルモン療法:低用量ピル、黄体ホルモン剤、GnRHアゴニストなどを用いて、内膜組織の増殖を抑える。
- 鎮痛薬(NSAIDs):炎症を抑えて痛みを和らげる。
体への負担が少なく、若年層や妊娠を希望する場合でも選択されやすい治療です。
手術療法
- 腹腔鏡手術:小さな切開で内視鏡を入れ、病変や癒着を除去する。体への負担が少ない。
- 開腹手術:重症例で必要に応じて行われる。
手術により妊娠の可能性を高めたり、強い症状を改善したりする効果が期待されます。
生殖補助医療(ART)
- 体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)などが適応となる場合があります。
- 子宮内膜症で卵管機能が障害されているケースに有効です。
近年では、薬物と手術を組み合わせた「ハイブリッド治療」も注目されており、再発を防ぎながら症状改善を目指す方法が広がっています。
日常生活での症状管理と妊娠への影響

治療と並行して、日常生活での工夫も症状管理に有効です。
- 適度な運動:ウォーキングやヨガなどが痛みの軽減に役立つ。
- 食生活の改善:オメガ3脂肪酸を含む魚や緑黄色野菜を摂取する。
- ストレス緩和:瞑想や深呼吸、趣味を取り入れて心身をリラックスさせる。
- 温熱療法:温湿布や入浴で骨盤周囲を温めると血流改善につながる。
また、子宮内膜症は不妊症の原因の一つとして知られています。
卵巣や卵管の癒着、炎症、卵子の質の低下などが関与しますが、適切な治療により妊娠の可能性は高められます。
腹腔鏡手術後に自然妊娠の確率が上がることもあり、タイミング法や人工授精、体外受精との組み合わせで妊娠に至るケースも少なくありません。
まとめ
子宮内膜症は強い生理痛や不妊の原因となり、生活の質を下げる疾患です。
- 症状:強い月経痛、骨盤痛、性交痛、不妊
- 原因:逆行性月経、免疫異常、遺伝、環境因子などが複雑に関与
- 治療:薬物療法・手術療法・生殖補助医療など、患者に合わせて選択
- 生活管理:運動・食事・温熱療法・ストレス緩和が有効
- 妊娠との関係:治療により自然妊娠や生殖補助医療の成功率が高まる
症状を我慢せず、体の変化を感じたら早めに婦人科を受診しましょう。
適切な治療と生活習慣の見直しにより、症状の軽減と将来の妊娠の可能性を高めることができます。
参考文献
- ⼦宮内膜症について 富士製薬工業株式会社


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