子宮頸がん検診だけで安心?HPVワクチン併用でリスクをぐっと下げる方法
【大阪/梅田】大阪駅前の総合内科クリニック|西梅田シティクリニックがお届けする健康情報。
是非、みなさまの健康管理にお役立てください。

「子宮頸がん検診はきちんと受けているので、HPVワクチンは打たなくていいと思っています」
外来でも、こうした声を少なからず耳にします。
子宮頸がんは20代から増え始め、30〜40代で発症のピークを迎える、女性にとって身近ながんのひとつです。
その多くはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因で、性交渉の経験があれば誰でも感染し得ます。
子宮頸がんを予防するために推奨されているのが、「HPVワクチン」と「子宮頸がん検診」の両方です。
検診を受けているからワクチンはいらない、ワクチンを打ったから検診は不要、という考え方は、実はどちらもおすすめできません。
このコラムでは、
- 検診とワクチンの役割の違い
- HPVワクチンの必要性と安全性
- 公費助成やキャッチアップ接種のポイント
を整理し、「検診は受けているからワクチンは不要」と考えている方に向けて、改めて情報をお伝えします。
子宮頸がん検診とHPVワクチンの「目的」の違い
まず押さえておきたいのは、子宮頸がん検診とHPVワクチンは、どちらも子宮頸がん予防に役立ちますが、「目的」がまったく違うという点です。
- HPVワクチン:HPVへの感染を防ぐ「一次予防」
- 子宮頸がん検診:すでに起こった細胞の異常を早期に見つける「二次予防」
検診で見つかるのは→「すでにHPVに感染し、細胞に異常が出はじめた段階」以降です。
つまり、検診は→「がんやその手前の状態を早く見つける仕組み」であり、「感染そのものを防ぐためのもの」ではありません。
一方のHPVワクチンは
将来のHPV感染をあらかじめ予防することで、前がん病変や子宮頸がんになるリスクを大きく下げることを目的としています。
すでに感染しているHPVや、できてしまった異常細胞を治す薬ではない、という点も誤解の多いところです。
そのため、「感染をできるだけ起こさない」ためにワクチン、「万が一異常が起きても早く見つけるために検診」という二本立てで対策することが、最も確実な予防といえます。
HPVと子宮頸がんの関係
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性交渉をきっかけに感染する、ごく一般的なウイルスです。日本でも、女性の多くが一生のうち一度はHPVに感染すると言われています。
ほとんどの場合、感染しても自覚症状がないまま免疫の力で自然に排除されますが、一部の「高リスク型」と呼ばれるタイプのHPVが長く居座ると、子宮頸部の細胞に変化を起こし、数年から十数年かけて前がん病変、子宮頸がんへと進行することがあります。
なかでもHPV16型・18型は子宮頸がんの原因として特に重要で、これらに加えて31・33・45・52・58型などを含めると、子宮頸がんの原因となるHPV型の多くを占めるとされています。
つまり、これらの型の感染をワクチンでしっかり予防できれば、子宮頸がんになるリスクを大きく減らせる、という考え方です。
現在のHPVワクチンと9価ワクチンの特徴

日本で使われているHPVワクチンは大きく3種類あります。
- 2価ワクチン(サーバリックス):16型・18型に対応
- 4価ワクチン(ガーダシル):16型・18型に加え、尖圭コンジローマの原因となる6型・11型に対応
- 9価ワクチン(シルガード9):上記4型に加え、31・33・45・52・58型にも対応
とくに近年主流となっている9価ワクチン(シルガード9)は、子宮頸がんの発症原因となるHPVの約9割をカバーできるとされており、より広い範囲の型からの感染を予防できる点が大きな特徴です。
ただし、どのワクチンもすべてのHPV型をカバーしているわけではありません。このため、「ワクチンを打ったから検診はもう必要ない」というわけではない、という点が重要です。ワクチンでカバーしきれないリスクを、子宮頸がん検診で補うイメージを持っていただくと良いと思います。
副反応と安全性について
HPVワクチンの副反応としては、他のワクチンと同様に、
- 接種部位の痛み・腫れ・赤み
- 軽い発熱
- 倦怠感、頭痛
などがよく見られます。多くは数日以内に自然におさまる一時的な症状です。
まれではありますが、失神やアナフィラキシーといった重い副反応が報告されることもあります。こうしたリスクは、他の多くのワクチンにも共通してみられるものであり、接種の現場では一定時間座って様子をみる、救急対応の体制を整えるなどの対策がとられています。
日本では以前、接種後の体調不良が大きく報道されたことをきっかけに、国が一時的に「積極的な勧奨を差し控える」という判断をした時期がありました。その後、多くの研究データや国内外の検証が行われ、ワクチンと報告された症状との間に明確な因果関係を示す根拠は得られていないとされ、2022年からHPVワクチンの積極的な勧奨が再開されています。
もちろん「まったくリスクのない医療」は存在しませんが、国内外の専門機関は総合的に判断し、「HPVワクチンは有効性と安全性のバランスから見て接種を勧めることが妥当」と評価しています。
迷うときには、
「子宮頸がんという重大な病気を予防できるメリット」と「起こり得る副反応のリスク」を冷静に比べて考えることが大切です。
HPVワクチンの公費助成とキャッチアップ接種
HPVワクチンは、現在「定期接種」として公費で接種できるワクチンです。通常は、小学校6年生から高校1年生相当の女子が対象で、この年齢であれば原則無料で接種を受けることができます。
一方、2013年からしばらくのあいだ積極的勧奨が中止されていた影響で、「本来なら定期接種として無料で接種できたはずなのに、その機会を逃してしまった世代」が生じました。この世代に対して設けられたのが「キャッチアップ接種」という制度です。
キャッチアップ接種の対象は、
1997年4月2日から2009年4月1日までに生まれた女性のうち、過去にHPVワクチンを3回完了していない人です。原則として、定められた期間内であれば3回分すべてを公費で接種できます。
このキャッチアップ接種自体は、2025年3月31日までにすべての接種を完了する必要がある制度として設けられていましたが、2022年4月1日から2025年3月31日までのあいだにHPVワクチンを1回以上接種している方については、2026年3月31日まで公費で残りの接種を完了できる経過措置が設けられています。
一方で、この期間に一度も接種していない場合は経過措置の対象外となり、その後は自費での接種となります。3回接種すると自費ではかなりの負担額になることも多く、対象となる方にとっては、公費で接種できるチャンスを逃さないことが非常に重要です。
制度や対象年齢、取扱いは自治体によって細かな違いがあるほか、今後変更される可能性もあります。必ずお住まいの市区町村の案内や窓口で最新情報を確認し、不明点があれば医療機関にも相談してください。
接種を迷っている人のための判断ポイント
接種歴があいまいな人
▶︎ 「打った気がするけど回数が分からない」
▶︎「母子手帳が見当たらない」
という方は少なくありません。この場合、まずは接種記録の確認が第一です。
母子手帳、自治体の接種記録、過去に接種した医療機関の記録などを確認できると、無駄な重複接種を避けやすくなります。記録が追えない場合でも、医師と相談して「現時点からの接種」を検討することは可能です。大切なのは、自己判断で放置せず、状況を整理して次の手を決めることです。
すでに性交渉の経験がある人
「もう感染しているかもしれないから意味がないのでは」と不安になる方もいますが、HPVは型が複数あり、すべての型に同時に感染しているとは限りません。ワクチンは“すでに感染している型を治す”ものではありませんが、“まだ感染していない型の予防”には役立つ可能性があります。そのため、性交渉の経験があっても、接種を検討する意味が残るケースは少なくありません。どの選択がよいかは年齢や状況で変わるため、迷う場合は医療機関で一緒に整理すると安心です。
妊娠を考えている(または将来希望がある)人
妊娠中は原則として接種を避けるため、妊娠を希望している方は、スケジュールの立て方がポイントになります。特にキャッチアップの期限が関係する世代では、いつまでに何回打てるかを逆算して計画することが大切です。妊娠を急ぐ場合は、検診を優先しつつ、ワクチンは医師と相談して現実的な計画を立てるのがよいでしょう。
医療・保育・教育など「人にうつすリスク」を意識したい人
HPVは主に性的接触で広がるため、職業上の“飛沫感染リスク”とは性質が異なりますが、若い世代の女性が多い職場や、将来の健康を意識したい方では「予防の選択肢を持っておく」こと自体が安心につながります。特に忙しい環境では、受診や接種が後回しになりがちなので、早めに予定を入れておくのがおすすめです。
【接種と検診を「続ける」ためのコツ】
予防は、1回の行動で終わりません。続けるために、次のような工夫が役立ちます。
- ワクチンは次回接種日をその場で予約し、忘れない仕組みにする
- 検診は誕生月や年度初めなど「固定のタイミング」を決める
- 結果が問題なくても、次回の予定をカレンダーに入れる
- 不安がある場合は、接種前に質問事項をメモして持参する
「検診は受けているから大丈夫」と感じている方ほど、ワクチンを“保険”として追加することで予防の抜け道を減らせます。ご自身の状況に合わせて、無理なく続けられる形を一緒に考えていきましょう。
「検診を受けているからワクチンは不要」ではない理由
最後に、「検診を受けているからHPVワクチンはいらない」という考え方がなぜおすすめできないのかを整理します。
▶︎検診は、すでに起こった細胞の異常を早期に見つける手段であり、感染自体を防ぐものではない
▶︎HPVワクチンは、これからのHPV感染を予防することで、そもそものリスクを下げる手段
▶︎ワクチンで予防できないHPV型もあるため、ワクチンを打っても検診は必要
▶︎検診にも限界があり、受診間隔のあいだに病変が進行する可能性もゼロではない
このように、「検診だけ」「ワクチンだけ」ではどうしてもリスクの“抜け道”が残ってしまいます。だからこそ、国や専門学会は、「HPVワクチン接種」と「子宮頸がん検診」の両方を受けることを推奨しています。
すでに20歳以上で定期的に検診を受けている方であっても、年齢やライフプラン、これまでの接種歴によっては、HPVワクチンを検討する意味は十分にあります。「もう大人だから手遅れ」というわけではありません。
まとめ:検診を続けながら、HPVワクチンも選択肢に
子宮頸がんは、「予防できるがん」のひとつです。
その鍵となるのが、HPVワクチンによる一次予防と、子宮頸がん検診による二次予防の両方を続けていくことです。
- 20歳以上になったら、定期的に子宮頸がん検診を受け続けること
- 定期接種の対象年齢やキャッチアップ対象の方は、公費で受けられる期間を逃さないこと
- 対象を過ぎてしまった場合でも、将来のリスクと費用を考えながら、自費接種も含めて検討すること
「検診を受けているから安心」と思う前に、ワクチンと検診の役割の違いを一度整理してみてください。わからない点や不安に感じることがあれば、婦人科やかかりつけ医に遠慮なく相談していただくのがおすすめです。
将来の自分の健康、そして家族の安心のために。
検診を続けることに加えて、HPVワクチンという選択肢についても、ぜひ前向きに考えてみてください。


健康コラム一覧へ戻る