(c) Nishiumeda city clinic

内科・婦人科病気検索

General Medicine

Home内科・婦人科病気検索排尿痛膀胱がん

膀胱がん

膀胱がんとは

膀胱は腎臓で作られた尿を一時的にためておく下腹部の袋状の臓器で、一定量たまると収縮して尿を排出します。
膀胱がんとは、その膀胱に発生する悪性腫瘍で、多くは膀胱の内側を覆う「尿路上皮」という細胞から発生します。
尿路上皮から生じるがんは膀胱の内側(表面)にとどまる場合と、膀胱壁の筋肉層へ深く侵攻する場合があり、前者を非浸潤性(表在性)膀胱がん、後者を浸潤性膀胱がんと呼びます。
表在性の早期がんなら比較的治療しやすいですが、筋層まで達した進行がんでは周囲の臓器やリンパ節にまで広がることもあり、治療も大がかりになります。

膀胱がんの発生頻度はそれほど高くありませんが、日本では人口10万人あたり毎年6~8人程度の新規患者が発生するとされ、近年やや増加傾向にあります。50歳以上の中高年に多く、男性は女性の約2~3倍発症しやすいことが知られています。

膀胱がんの症状

膀胱がんはかなり進行するまで自覚症状が出ないこともありますが、多くの場合、初期から排尿に関する何らかの異常が現れます。
主な症状としては以下のようなものがあります。

  • 血尿
    膀胱がんの初発症状として最も多い徴候です。
    健康診断の尿検査で潜血を指摘される程度の微かな出血から、尿が肉眼で赤く見えるほどはっきりした出血まで様々なパターンがあります。痛みを伴わない血尿でも侮れません。
  • 排尿時の痛み・灼熱感
    尿をする際に痛んだり、ヒリヒリと灼けるような不快感を覚えることがあります。しばしば膀胱炎と似た症状ですが、膀胱炎の治療をしても症状が繰り返す場合は注意が必要です。
  • 頻尿・尿意切迫感
    トイレが近くなったり、急に強い尿意を感じて我慢が難しくなることがあります。膀胱に腫瘍ができると容量が少なくなったり刺激で尿意が生じやすくなるためです。
  • 背中の痛み
    がんが進行して膀胱から尿管への出口を塞いでしまうと、腎臓から膀胱へ尿が流れなくなります。
    その結果、尿管や腎盂が拡張して腎臓付近の腰や背中に痛み・違和感を生じることがあります。


特に血尿は膀胱がんを含む泌尿器系の異常のサインですので、「痛くないから大丈夫」と自己判断せず医師の診察を受けてください。

膀胱がんの原因

膀胱がんは膀胱内の細胞の遺伝子に変異が蓄積することで発生すると考えられています。
はっきりとした原因がわからない場合も多いものの、いくつかの危険因子が知られています。

  • 喫煙
    タバコを吸う習慣は膀胱がん最大の危険因子です。
    新たに診断される膀胱がん患者の半数以上で喫煙が原因の一つになっていると報告されています。
    実際、喫煙者は非喫煙者に比べて約4倍も膀胱がんを発症しやすいことがわかっています。
    長年の喫煙習慣がある方ほど注意が必要です。
  • 化学物質への長期曝露
    一部の化学物質への長期間の曝露もリスク要因です。
    かつて、化学物質は染料に用いられていた芳香族アミンが暴露から20年前後の長期経過を経て膀胱がん発生に関わると言われています。
    現在では労働環境の安全基準の向上により、こうした物質にさらされる機会は減少していますが、過去に染料工場やゴム製造に携わった方ではリスクが高いことが報告されています。
  • 薬剤の影響
    抗がん剤の一種であるシクロホスファミドなど、一部の薬剤を長期間使用した場合にも膀胱がんの発生率が上昇することが知られています。
    また、骨盤への放射線治療歴がある場合も将来的に膀胱がんのリスクがわずかに高まると指摘されています。
  • 慢性的な膀胱への刺激
    膀胱が長期間にわたり慢性的に刺激される状態も発がんの一因となりえます。
    具体的には、中東やアフリカでみられる寄生虫感染症の膀胱住血吸虫症や、膀胱結石、慢性の膀胱炎、長期の尿道カテーテル留置などが挙げられます。ただし、こうした慢性刺激が原因で生じる膀胱がんは全体から見るとごく一部に過ぎません。 

これらの危険因子を持っているからといって必ず膀胱がんになるわけではありません。
しかし、複数のリスクが重なると発症率が高まる可能性があります。
日常生活で該当するリスク要因がある場合は、なるべくその影響を減らすよう心がけることが大切です。

膀胱がんの治療

膀胱がんの治療法は、がんの進行度や広がりによって大きく異なります。
一般に、早期の表在性膀胱がんには内視鏡による手術治療が主体となり、進行した浸潤性膀胱がんには膀胱の摘出を含む外科治療や化学療法など全身的な治療が検討されます。
ここでは主な治療について、その進行度ごとに説明します。

表在性膀胱がん(筋層非浸潤性がん)

膀胱の表面にとどまっている早期がんの場合、まず経尿道的膀胱腫瘍切除術と呼ばれる内視鏡手術で腫瘍を切除します。
細い内視鏡を尿道から挿入し、膀胱内のがんを切り取る手術で、多くの膀胱がん患者さんはまずこの治療を受けます。
経尿道的膀胱腫瘍切除術で見える範囲のがんを取り切った後は、再発予防のため膀胱内に抗がん剤やBCGワクチン(弱毒化した結核菌で免疫を活性化させる薬)を定期的に注入する「膀胱内注入療法」を行うことがあります。
この膀胱内注入療法は通常、週1回のペースで6~8週にわたり継続して行われ、再発のリスクが高い場合には半年ごとなど一定間隔で追加の注入を行うケースもあります。
こうした処置により、術後の再発リスクを下げる効果が期待できます。

筋層浸潤性膀胱がん

がんが膀胱の筋肉層まで達している場合、内視鏡手術だけでがんを完全に取り除くことは困難です。
このため、通常は膀胱の全部または一部を切除する根治的手術が行われます。
進行度によっては膀胱の周囲にあるリンパ節も含めて摘出し、男性では前立腺や精嚢、女性では子宮や卵巣、腟壁の一部など膀胱に隣接する臓器を同時に切除することがあります。
膀胱を摘出したあとは尿の通り道を新たに確保する必要があり、尿路変向術という処置を行います。
代表的な方法は回腸導管といって、小腸の一部で尿の通り道を作り、お腹の表面にストーマを設けて尿を体外に排出するものです。
この場合、常に尿が体外に排出されるため腹部に専用の袋を装着して生活します。
もう一つは新膀胱といって、小腸など消化管の一部で膀胱の代わりとなる袋を作り、そこに尿管と尿道をつなぐ方法です。
新膀胱を造設した場合、自分の意思で排尿することが可能になるため生活の質が保ちやすい利点があります。
しかし、尿路変更術にはいくつかのリスクがあります。
特に神経障害によって、勃起不全や尿意の喪失が生じることがあります。
勃起不全は、特に男性にとって深刻な問題となる可能性があります。
また、新膀胱を造設した場合、排尿をコントロールするためのリハビリが必要であり、術後に尿もれが生じることもあります。
どの方式の尿路変向を行うかは、がんの状態や患者さんの希望・全身状態を踏まえて主治医と相談して決定します。
なお、浸潤性膀胱がんの治療成績を向上させるために、手術の前後に抗がん剤治療を併用することもあります。
手術前に化学療法を行うことで目に見えない転移を抑え、根治手術のみの場合と比べて生存率が改善したとの報告もあります。

進行・転移した膀胱がん

がんが膀胱を超えてリンパ節や他の臓器に転移している場合や、体力的に大きな手術が難しい場合には、主に抗がん剤治療による全身的な治療が行われます。
膀胱がんが転移しやすい臓器としてはリンパ節のほか肺・肝臓・骨などが知られています。
化学療法では複数の抗がん剤を組み合わせて点滴投与する多剤併用療法が標準的で、副作用として吐き気・食欲不振、白血球や血小板の減少、貧血、口内炎などが現れることがあります。
近年ではパクリタキセルやゲムシタビンといった薬剤を含む新しい治療薬の組み合わせを用いることで、従来より副作用を抑えつつ転移病巣への治療効果を高められる場合もあります。
また、最近は免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる新しいタイプの薬剤が進行膀胱がんに対して使用できるようになり、一部の患者さんで効果を示しています。こうした全身療法は患者さんの状態に合わせて行われ、症状の緩和や延命を図ります。

放射線療法

膀胱がんに対する放射線治療は、手術や化学療法と比較すると治癒の可能性はやや劣りますが、高齢で大きな手術に耐えられない場合や、患者さん自身が膀胱を温存したいと希望する場合などに選択肢となります。
放射線療法は、がんそのものを小さくして出血や痛みを和らげる効果も期待でき、他の治療と併用することもあります。
副作用を抑えて効果を高めるために、通常は1日あたり少量の放射線を照射し、それを数週間から2ヶ月ほど毎日続ける方法がとられます。
放射線照射による副作用として、膀胱の容量が小さく硬くなる膀胱萎縮や膀胱出血、直腸出血、皮膚のただれなどが起こることがあります。
放射線治療を行う際は、治療効果と副作用リスクを主治医とよく相談した上で方針を決定します。

早期発見のポイント

膀胱がんは他のがんのように、公的な集団検診の仕組みがありません。
そのため、症状のサインを見逃さず早期に受診することが何より重要です。

中でも血尿は膀胱がん早期発見の鍵となる症状です。
尿に血が混じっていることに気付いたら、痛みがなくても放置せず必ず医療機関を受診しましょう。
ごく微量の血尿の場合は自覚できませんが、健康診断の尿検査で赤血球が検出されたと指摘されることがあります。
目で見てわかる血尿はもちろん、尿検査での指摘のみの場合も含め、血尿が確認されたらできるだけ早く泌尿器科で詳しい検査を受けることをお勧めします。

膀胱鏡や尿細胞診といった検査により、膀胱がんの有無を調べることができます。

排尿痛や頻尿などの症状は多くの場合は膀胱炎など良性の原因によりますが、治療を行ってもそうした症状が繰り返す場合には膀胱がんが隠れていないか確認が必要です。
実際、膀胱炎と膀胱がんが同時に起こっているケースもあります。
また最近では、他の目的で受けた腹部超音波検査やCT検査で偶然に膀胱腫瘍が発見されることもあります。

このように診断技術の進歩により偶発的に早期の膀胱がんが見つかる機会も増えています。
膀胱がんを早期に発見できれば、内視鏡手術など体への負担が小さい治療で根治が期待でき、長期的な生存率も向上します。
日頃から尿の状態に注意を払い、異常を感じたら早めに専門医を受診することが早期発見につながります。

予防の基礎知識

膀胱がんを完全に予防する確実な方法はありませんが、リスク要因を減らすことで発症率を下げることが期待できます。特に以下のポイントに気をつけましょう。

  1. 禁煙
    膀胱がん予防で最も重要なのは喫煙をやめることです。
    タバコを吸っている方はぜひ禁煙を検討してください。
    禁煙開始から時間が経つほど、吸い続けた場合に比べて膀胱がんのリスクが下がることが研究で明らかになっています。
    喫煙は膀胱がん以外にも様々ながんや病気のリスクを高めますので、禁煙することが一番良いでしょう。
  2. 健康的な生活習慣
    日頃から生活習慣を整えることも大切です。
    日本人を対象とした研究では、禁煙のほかに節度ある飲酒、バランスの良い食事、適度な運動、適正体重の維持、そして肝炎ウイルスなど感染症の予防といった項目ががん全般の予防に有効であると報告されています。
    これらは膀胱がんに限らず、生活習慣病や他のがんの予防にもつながります。
    特に暴飲暴食を控え、野菜や果物を含むバランスの取れた食事を心がけ、適度に体を動かす習慣を持つようにしましょう。
  3. 有害物質への対策
    職業柄どうしても化学物質を扱う方は、防護具の着用や作業環境の換気など安全対策を徹底してください。
    また、定期的に健康診断を受けて尿検査を行い、血尿など異常の早期発見に努めましょう。
    前述のような染料やゴム製造に関わる化学物質による職業性膀胱がんは、近年では安全基準の整備により発生が減少しています。
    今後も労働環境の改善や法規制を遵守することで、こうした職業性の膀胱がんを防いでいくことが重要です。

以上のような予防策を心がけても膀胱がんを完全に防げるわけではありませんが、リスクを下げることにつながります。
特に喫煙者の方は禁煙することで膀胱がんのみならず多くの病気の予防に寄与します。
日々の生活でできる範囲から実践し、膀胱がんの発症リスクを少しでも減らすようにしましょう。

大阪梅田の内科診療なら
西梅田シティクリニックへ!

平日は21時まで365日年中無休で開院しております。気になる症状があれば、お気軽に来院ください。

内科・婦人科病気検索トップへ戻る内科・婦人科病気検索トップへ戻る