梅雨から夏にかけて要注意!細菌性食中毒
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梅雨から夏にかけて気温と湿度が高くなる時期は、細菌が非常に繁殖しやすい環境です。
この季節は暑いため、食卓にサラダやお刺身など冷たい料理が並ぶ機会が増え、台所での長時間の加熱調理を避けて調理時間を短縮しがちです。
しかし、生鮮食品はしっかり洗浄・加熱しないと細菌が残り、食中毒の原因になります。
また、「冷蔵庫に入れておけば安心」と思いがちですが油断は禁物です。
冷蔵庫内でも細菌は繁殖しやすく食品は傷みますし、冷凍庫でも細菌が完全に死滅するわけではありません。
冷凍で活動が止まっているだけの細菌も、解凍すれば再び増殖を始める可能性があります。
実際、過去の統計でも梅雨どきから夏季にかけて、食中毒が多発していることが知られています。
「暑さで食品が傷みやすいから気をつけて」と毎年ニュースなどで注意喚起されるのも、この時期ならでは注意点と言えるでしょう。
代表的な食中毒とその症状・予防のポイント
食中毒を起こす原因はいろいろありますが、ここでは代表的な細菌による食中毒について、その種類ごとの特徴と予防法を見てみましょう。
細菌性食中毒には大きく分けて、食品中で繁殖した細菌自体が腸に感染して症状を起こす「感染型」と、食品中で増殖した細菌が産生した毒素によって起こる「毒素型」があります。
前者の代表がサルモネラ菌や病原性大腸菌(O-157など)、後者の代表が黄色ブドウ球菌やボツリヌス菌です。
それでは、主な細菌について原因・症状・予防のポイントをご紹介します。
サルモネラ菌
原因と特徴
- サルモネラ菌は動物の腸管や自然界に広く分布する細菌
- 特に卵の殻の表面や生の鶏肉を汚染しやすい
- 乾燥に強く、低温環境下でも長く生存できる
症状
- 摂取後6~72時間ほどの潜伏期
- 激しい腹痛や下痢、発熱、嘔吐
- 重度の脱水症状を引き起こすこともある
予防ポイント
- 肉や卵は中心部まで十分に加熱調理(目安は中心温度75℃で1分以上)
- 卵の生食はできるだけ新鮮なものを選ぶ
- 生の肉や卵を扱った後の調理器具や手指はすぐに洗浄・消毒
- 冷蔵庫では肉や卵を10℃以下(可能なら4℃以下)で保存、生鮮食品は長時間室温に放置しない
腸管出血性大腸菌(O-157)
原因と特徴
- 少量で重篤な症状を引き起こす強い毒素(ベロ毒素)を作り出す細菌
- 主な感染源は十分に加熱されていない牛肉(特に挽肉)料理や汚染された井戸水、生野菜など
- 加熱や消毒に弱い性質があるため、衛生管理が重要
症状
- 腹痛、下痢、発熱、嘔吐などの症状
- 血が混じるほどの激しい下痢
- O-157のベロ毒素により大腸の血管が破壊され、血便が出たり、重症例では溶血性尿毒症症候群という深刻な合併症に至ることもある
予防ポイント
- 調理器具や手指の十分な洗浄・消毒
- 低温での食品保存
- 肉類の十分な加熱が有効(特に牛肉は内部までしっかり火を通し、中心部を75℃で1分以上加熱)
- 生野菜は流水でよく洗う
- 井戸水は煮沸する
カンピロバクター
原因と特徴
- 鶏肉などの食肉や飲料水、生野菜から感染することが多い
- 鶏など家畜の腸内に生息し、食肉処理の段階で肉や内臓、水を汚染
- 乾燥に非常に弱く、 通常の加熱調理でも容易に死滅する
症状
- 潜伏期間は1~7日とやや長め
- 発熱、倦怠感、頭痛に続き、吐き気や腹痛、下痢など
- 下痢便に血が混じることもある(血便)
- まるで風邪のような全身症状から始まり徐々に胃腸症状が悪化していく
予防ポイント
- 食肉、とくに鶏肉の取り扱いに注意が必要
- 調理器具は熱湯消毒してよく乾燥させる
- 生の肉と他の食品は直接接触させない
- 肉類は中心部まで十分に加熱(目安は中心温度65℃以上で数分間)
- 調理後は手指を石鹸でしっかり洗浄・消毒
※なお、細菌による食中毒にはこの他にも以下のような様々な種類があります。
- 腸炎ビブリオ(夏場の魚介類が原因になりやすい)
- 黄色ブドウ球菌(人の手指にいる菌で、おにぎり等を介して毒素型の食中毒を起こす)
- ボツリヌス菌(真空パック食品や蜂蜜に潜む菌で強力な神経毒を産生する)
原因菌ごとに潜伏期間や症状の現れ方は異なりますが、多くは腹痛・下痢・嘔吐といった胃腸炎症状を引き起こす点は共通しています。
どのタイプの食中毒も、基本は「菌をつけない・増やさない・やっつける」という予防の3原則(後述)に沿った衛生管理で防ぐことができます。
日頃から、食品の保存温度や調理時の清潔さに十分気を配りましょう。
食中毒かも?症状から見極めるチェックポイント

「もしかして食中毒かな?」と思ったときに、判断の目安となる症状について解説します。
代表的な症状はやはり胃腸の不調です。
具体的には腹痛、吐き気・嘔吐、下痢が三大症状で、場合によっては発熱も見られます。
これらはウイルス性・細菌性を問わず食中毒全般に共通する症状で、原因にもよりますが数時間~数日の潜伏期間を経て突然発症することが多いです。
「お腹に差し込むような痛みがあり、何度も吐いたり下したりして止まらない」という場合は、感染性胃腸炎(食中毒)を強く疑いましょう。
特に下痢に嘔吐や高熱、激しい腹痛が伴うときは重症ケースも考えられるため、一刻も早く病院を受診してください。
反対に、食べ過ぎ、飲み過ぎや寝冷えが原因の軽い下痢であれば、適度な水分補給と安静で1~2日程度で回復することが多いです。
症状の程度と経過を見極めて対応しましょう。
一方、一般的な風邪は本来、鼻や喉の炎症を主体とする感染症ですので、基本的には胃腸の激しい症状は伴いません。
風邪をひいたときに食欲が落ちたり下痢気味になる人もいますが、嘔吐を繰り返したり激しい腹痛に見舞われることは通常ありません。
また「胃腸炎」と呼ばれる病気がありますが、これはウイルスや細菌による胃腸の感染症全般を指す言葉で、食中毒も広い意味では感染性胃腸炎の一種です。
特にノロウイルスなどは冬場に流行しやすく、しばしばお腹の風邪などと通称されます。
実際、ノロウイルスによる軽い食中毒症状は普通の風邪と区別がつかないこともあります。
食中毒かどうか見極めるポイントの一つは、原因となり得る食事との関係です。
たとえば同じものを食べた家族や同僚が自分と同じようにお腹を壊していれば、何らかの食品が原因の食中毒である可能性が高いでしょう。
症状だけで判断が難しい場合もありますので、体調が悪いときは無理をせず早めに医療機関に相談するのがおすすめです。
もし食中毒になったら?発症後の適切な対応と注意点
万が一、食中毒らしき症状が出てしまったら、まず落ち着いて適切な対処をしましょう。
安静と水分補給
下痢や嘔吐によって体から水分や塩分が大量に失われると、脱水症状を引き起こすおそれがあります。
下痢が続く間は無理に食事をとらず胃腸を休ませ、水分をこまめに補給してください。
このとき一度に大量の水を飲む必要はありません。
常温の水や薄めたお茶、経口補水液(ORS)やスポーツドリンクなどを少しずつゆっくり飲むとよいでしょう。
水分とともに失われがちな塩分・電解質を補給できる点で、スポーツドリンクや経口補水液は特に適しています。
吐き気が強く水分さえ受けつけない場合は、無理に食べたり飲んだりせず少し時間をおいてから再度試みます。
それでも水分がまったく摂れないようなら早めに受診しましょう。
下痢止めなどの薬は基本的に自己判断で使わない
下痢や嘔吐は体内に入った有害物を排出しようとする生理現象です。
むやみに止めてしまうとかえって治りが遅くなることがあります。
市販の下痢止め・吐き気止めを安易に飲むことは避け、まずは体内からウイルスや最近を排出することを優先しましょう。
また、原因がノロウイルスなど人にうつるタイプの食中毒だった場合、嘔吐物や下痢便を適切に処理しなかったことで家族に二次感染させてしまうおそれもあります。
吐瀉物(嘔吐や下痢によって体外に出た消化管の内容物)の処理は使い捨て手袋とマスクを着用し、次亜塩素酸系の消毒液でしっかり拭き取る、といった感染対策も念頭においてください。
次のような場合は早めに医療機関を受診する
- 水分すら摂れない・受け付けない場合
飲んでもすぐ吐いてしまい補給ができない状態が続くと、短時間でも深刻な脱水に陥る危険があります。
特にお子さんや高齢の方がぐったりしている場合は迷わず受診しましょう。 - 嘔吐や下痢の回数があまりに多い場合
目安として一日に10回以上も嘔吐・下痢を繰り返すようならば、体力の消耗が甚だしいため受診しましょう。 - 激しい腹痛が続いている場合
通常、嘔吐や下痢で胃腸の中身が出てしまえば腹痛は次第に和らぐものですが、症状が治まった後も強い腹痛が続くようなら他の病気(例:急性虫垂炎)の可能性も含めて専門医の判断を仰ぐべきです。 - 高熱が出ている場合
39℃前後の高熱を伴うケースでは脱水が進みやすく危険です。
以上のような症状がみられたら、「もう少し様子を見よう」と自己判断せず、できるだけ早く受診してください。
まとめ
繰り返しになりますが、細菌性食中毒は正しい知識と予防策で大部分を防げるものです。
特に梅雨~夏場は食品の取り扱いには普段以上に注意を払いましょう。
それでも「もしかして食中毒かも?」という症状が出て不安なときは、早めに医療機関に相談することが大切です。
参考文献
- 食中毒について 新百合ヶ丘総合病院
- 食中毒の種類と症状について 医療法人AGIH 秋本病院
- 下痢・食あたり(食中毒)の対策 くすりと健康の情報局
- 食あたり(食中毒)の対処法は?医療機関を受診する目安や注意点を解説 スギ薬局グループお客様サイト