麻疹の抗体は何年でなくなる?ワクチン接種済でも感染するって本当?
「子どもの頃に打ったはずだけど、今も麻疹の抗体は残っているのだろうか」と不安に感じていませんか。
健康診断や職場、海外渡航をきっかけに気になった方も多いはずです。
実は、ワクチンの免疫は年数とともに弱まる可能性があり、1回接種だけでは感染を防ぎきれないケースもあります。
この記事では、抗体が持続する年数の考え方から、世代別のリスク、追加接種を検討する際の判断基準までを分かりやすく解説します。
麻疹の抗体は何年でなくなる?

麻疹の抗体がどのくらい持続するかは、抗体を獲得した方法(自然感染かワクチンか)や個人の免疫状態によって異なります。
ここでは、抗体の性質と持続期間の基本を整理します。
直接感染してできた抗体は生涯持続するとされる
直接感染によって自然に獲得した免疫は非常に強力であり、実質的に生涯にわたって持続するとされています。
米国疾病予防管理センターも、ワクチン導入前の1957年以前に生まれた世代は幼少期に自然感染している可能性が高く、生涯続く免疫を持っているとみなしています。
そのため、過去に医師による診断を受けて麻疹にかかった記録が残っている方は、基本的に追加のワクチン接種は不要とされているのです。
ワクチンの免疫は接種回数で考え方が異なる
ワクチンによる免疫は、1回接種か2回接種かによって、獲得率と持続性が大きく変わります。
厚生労働省などの資料によると、1回接種では約95%の人が免疫を獲得する一方、残り5%は十分な免疫がつかないとされています。
一方、2回接種では免疫獲得率が97〜99%まで高まり、長期的に安定した免疫が期待できることが確認済みです。
このため日本でも2006年以降、1歳時と小学校入学前の2回接種が定期接種として位置づけられました。
抗体の持続期間は一律に何年とは言えない
ワクチンの抗体持続期間には個人差が大きく、「一律に何年でなくなる」と断言することはできません。
接種から26〜33年経過しても、92%の人が感染を防ぐのに十分な保護レベルを維持していたという米国の調査結果があります。
一方で、10〜15年程度で抗体価が低下し始めるケースも報告されています。
現代は自然な麻疹の流行が減り、ウイルスに再曝露されて免疫が強化される「ブースター効果」の機会が少ないため、抗体の減衰が早まる可能性が指摘されています。
ワクチン接種済でも麻疹にかかる理由

ワクチンを接種していても、ごく稀に麻疹に感染する「ブレイクスルー感染」が起こることがあります。
ブレイクスルー感染の理由には以下の3つが挙げられます。
- 1回の接種では十分な免疫を獲得できない
- 時間の経過で免疫が低下することがある
- 2回接種しても感染する修飾麻疹とは?
順番に解説します。
1回の接種では十分な免疫を獲得できない
ワクチンを1回接種しただけでは、約7%の人が十分な免疫を獲得できない「一次性ワクチン不全」となる可能性があります。
この現象は「プライマリーワクチンフェイラー(PVF)」と呼ばれ、2回接種制度が導入された理由の一つにもなりました。
一次性ワクチン不全を回避し、確実な免疫を得るには2回の接種が推奨されています。
時間の経過で免疫が低下することがある
ワクチンで獲得した免疫は、年月の経過とともに抗体が減衰し、感染を防ぐのに必要なレベルを下回ってしまう「二次性ワクチン不全」が起こることがあります。
接種当初は十分な抗体があったとしても、ウイルスに触れる機会が少ない環境では体内の抗体量は少しずつ減少していくのです。
実際の感染事例でも、過去にワクチン接種歴があるにもかかわらず発症した例が報告されています。
ワクチン接種から長い年月が経過している方は、現在の免疫状態を抗体検査で確認するという選択肢が有効な対策の一つといえます。
2回接種しても感染する修飾麻疹とは?
修飾麻疹とは、不完全な免疫を持つ人が麻疹に感染した際に、軽症で非典型的な症状が出る状態を指します。
2回接種していても、免疫が十分でない場合にこの状態になることがあり、高熱や特徴的な発疹が出にくいまま経過します。
やっかいなのは、症状が風邪と間違われやすい一方で、他人への感染力は残っているという点です。
本人が気づかないうちに職場や家族に広げてしまう恐れがあるため、発熱・発疹・咳などの症状がある場合は早めに医療機関へ相談することが大切です。
抗体検査や追加接種が必要か迷ったときの判断基準

自分が抗体検査や追加接種を受けるべきか迷った際は、以下のポイントを確認してください。
- 母子手帳の記録によるワクチン接種回数の確認
- 過去の「検査診断された」罹患歴の確認
- 職業やライフスタイルによるハイリスク群への該当確認
- 生年月日による世代的リスクの確認
順番に解説します。
母子手帳の記録によるワクチン接種回数の確認
麻疹ワクチンの接種歴を確認する最も確実な方法は、母子手帳の記録を見直すことです。 母子手帳にはワクチンの種類・接種日・医療機関名が記載されているため、2回接種が完了しているかを客観的に把握できます。
記憶は不確実であるため、「記憶があいまい」「自分が何回打ったか分からない」という方は、まずは母子手帳などの書面での記録を探してみてください。
どうしても接種の記録が見つからない場合は、免疫が不十分な可能性が高いと判断して対応を検討しましょう。
過去の「検査診断された」罹患歴の確認
過去に麻疹にかかった記憶がある場合でも、医師による「検査診断」が行われていたかどうかで扱いが変わります。
麻疹と思っていた病気が、実は風疹・突発性発疹・川崎病など、似た症状を示す別の疾患だったというケースも少なくありません。
血液検査や医師の診断記録が残っている罹患歴であれば信頼できますが、曖昧な場合は抗体検査で現状を確認するほうが確実です。
職業やライフスタイルによるハイリスク群への該当確認
麻疹への対応を早めに考えたほうがよい職業や、ライフスタイルもあります。
医療従事者・保育関係者・学校の教職員・接客業など、多くの人と接する職業の方は感染リスクも周囲への影響も大きいとされています。
また、海外渡航が多い・乳児と同居している・妊娠を予定している家族がいるなどの場合もハイリスク群に含まれる方々です。
ご自身やご家族がハイリスク群に該当する場合は、接種歴や抗体の有無を早めに確認し、必要に応じて医療機関で相談することをおすすめします。
生年月日による世代的リスクの確認
日本のワクチン制度の変遷により、生まれ年によって接種機会が異なります。
自身の世代がどの制度の対象であったかを確認することが、リスク把握の目安になります。
例えば、1972年9月30日以前生まれの方は定期接種の対象外、1972年10月1日〜1990年4月1日生まれの方は1回接種などです。
自身の生年月日から「どの制度の時代に育ったか」を把握すれば、感染リスクを評価する最初の手がかりになります。
世代別にみる麻疹ワクチン接種歴の確認ポイント

麻疹ワクチンの定期接種制度は過去に何度も変更されており、生年月日によって受けた接種回数が異なります。
ここでは3つの世代区分と、生まれ年だけで判断してはいけない理由を解説します。
2回接種世代(2000年4月2日以降生まれ)
2000年4月2日以降に生まれた方は、現行の制度により定期接種として麻疹含有ワクチンを2回受ける機会があった世代です。
2006年に麻疹風疹混合(MR)ワクチンの2回接種制度が導入されたため、1歳時と小学校入学前1年間の計2回が定期接種として提供されてきたのです。
2回接種を完了している場合、免疫獲得率は約97〜99%とされ、感染リスクは相対的に低いと考えられています。
未完了の場合は追加接種の検討が必要ですが、母子手帳等で2回接種の記録が確認できれば、追加接種は原則不要です。
1回接種世代(1972年10月1日~1990年4月1日生まれ)
1972年10月1日〜1990年4月1日生まれの方は、定期接種の機会が1回のみであった世代にあたります。
ワクチン1回接種では、数%の人が十分な免疫を獲得できない可能性があり、さらに数十年の時間経過とともに免疫が弱まっているケースも考えられます。
なお、その後の1990年4月2日〜2000年4月1日生まれの世代には、2008〜2012年度に追加接種の機会が設けられましたが、受けていない方も少なくありません。
いずれの世代も、母子手帳等で「2回」の接種歴が確認できない場合や不安がある場合は、抗体検査や追加接種を検討するとよいでしょう。
未接種の可能性が高い世代(1972年9月30日以前生まれ)
1972年9月30日以前に生まれた方は、麻疹ワクチンの定期接種制度が始まる前の世代であり、接種機会がなかったとされています。
ただし、この世代は子どもの頃に流行のなかで自然感染していた方が多く、終生免疫を獲得している可能性が高いです。
一方で、感染経験がはっきりしない方や症状が軽かった方は、十分な免疫がついていないこともあります。
海外渡航や医療現場での勤務などリスクがある場合は、抗体検査で現状を確認することをおすすめします。
生まれた年代だけで判断してはいけない理由
世代区分はあくまで「制度上どの接種機会があったか」を示す目安にすぎず、実際に接種を受けたかどうかには個人差があります。
例えば、2回接種世代でも1回しか受けていない方や、逆に1回接種世代や未接種世代でも任意で追加接種を受けた方もいらっしゃいます。
また、自然感染歴の有無や免疫の持続期間の個人差も大きな要素です。
母子手帳など書面での記録の確認や、抗体検査などを組み合わせて現状を把握することが、正確なリスク評価につながります。
麻疹ワクチンを打てない人と注意が必要な人

麻疹ワクチンは生ワクチンのため、すべての人が接種できるわけではありません。
妊娠中の方や特定の疾患を持つ方は接種が制限され、接種後も一定期間は妊娠を避ける必要があります。
この章では、接種が難しい方と、医師の判断が必要になるケースについてお伝えします。
妊娠中は接種できない
妊娠していることが明らかな方は、麻疹ワクチン(MRワクチン)の接種ができません。
生ワクチンは弱毒化したウイルスを使用しており、理論上は胎児への影響が否定できないため、予防接種ガイドラインでも接種禁忌とされています。
そのため、妊娠を計画している方は、妊娠前の抗体検査や必要に応じた接種を済ませておくことが推奨されています。
なお、仮に妊娠に気づかずに接種した場合でも、自己判断せず医師に相談することが大切です。
接種後しばらくは妊娠を避ける必要がある
妊娠可能な女性がワクチンを接種した場合は、胎児への理論的リスクを避けるため、接種後約2か月間は妊娠を避ける必要があります。
2か月という期間設定は、体内からワクチンウイルスが消失するまでの安全を考慮した目安です。
妊娠を予定している方は、接種のタイミングから逆算して計画を立てる必要があります。
体調や基礎疾患によっては医師判断になる
基礎疾患や体調によっては、「絶対に接種できないケース(禁忌)」と、「医師の慎重な判断が必要になるケース」に分かれます。
【絶対に接種できない方(禁忌)】
- 免疫機能に異常のある疾患を有する方
- 免疫抑制の効果がある治療を受けている方
- 過去にワクチンの成分でアナフィラキシー(重いアレルギー反応)を起こしたことがある方
【医師の判断が必要になる方】
- 心臓、腎臓、肝臓、血液の病気や発育障害などの基礎疾患がある方
- これまでに予防接種を受けて、2日以内に発熱やアレルギー症状が出た方
- 過去にけいれんを起こしたことがある方は、必ず医師に現在の健康状態を伝えて判断を仰いでください
また、3か月以内に輸血やガンマグロブリン製剤の投与を受けた方は、ワクチンの効果が十分に得られないおそれがあります。
ガンマグロブリン製剤の投与量に応じて、3〜6か月以上の間隔をあける必要があるため、注意が必要です。
麻疹が疑われるときの受診方法と行動

麻疹が疑われる症状が出たときは、受診の仕方にも注意が必要です。
感染力が非常に強いウイルスのため、通常の風邪と同じ行動をして、待合室や移動先で感染を拡大させることのないよう注意しましょう。
この章では、症状が出たときに取るべき具体的な行動を3つの視点から解説します。
発熱・発疹・咳・結膜充血があるときは事前連絡して受診する
麻疹の初期症状(発熱・咳・鼻水・結膜充血)や発疹が現れた場合は、直接医療機関に行かず、まず電話で事前連絡することが推奨されています。
連絡をした医療機関の指示に従い、他の患者と接触しない時間帯や経路で受診しましょう。
公共交通機関の利用を避ける
医療機関への移動時は、電車・バス・タクシーなどの公共交通機関の利用を避けることが推奨されています。
麻疹ウイルスは空気感染するため、密閉された車内で短時間一緒にいただけでも感染が広がる可能性があるのです。
移動が必要な場合は、家族による自家用車での送迎や、どうしても移動手段がない場合は医療機関に相談のうえ指示を仰ぐのが安全です。
家族や職場に広げないために気をつけること
麻疹は発症前日から感染力を持つとされており、家族や職場に広げない配慮が欠かせません。
発症が疑われる段階で学校・職場には連絡し、自宅で静養することが基本となります。
同居する家族の中にワクチン未接種の乳幼児・妊婦・免疫機能が弱い方がいる場合は、可能な範囲で部屋を分け、食器やタオルの共用を控えるなどの工夫が必要です。
また、過去の接種歴や抗体の有無を家族間で共有しておくと、万が一のときに保健所や医療機関への情報提供もスムーズになります。
麻疹の抗体に関するよくある質問

ここまで解説してきた内容に加え、読者の方から特に多く寄せられる疑問を5つのQ&A形式で整理します。
抗体の持続性・ワクチンの効果・接種歴の確認方法など、自分の状況に当てはめて判断する際の参考としてご活用ください。
麻疹の抗体は一生続きますか?
麻疹の抗体が一生続くかどうかは、免疫のでき方によって異なります。
自然感染や2回のワクチン接種で得た免疫は長期間持続しますが、ワクチンの場合は時間の経過とともに抗体が低下する場合があり、すべての人で一生続くとは限りません。
接種から年月が経っていて不安な方は、抗体検査で現状を確認するのがひとつの選択肢となります。
MRワクチンを打っていれば大丈夫ですか?
MRワクチンを接種していれば安心度は高まりますが、絶対に感染しないとは言い切れません。
2回接種での免疫獲得率は約97〜99%とされており、非常に高い水準である一方、残り1〜3%の方は十分な免疫がつかない可能性があります。
また、1回のみの接種の場合は5%ほどの方で免疫が不十分とされており、年月とともに抗体価が低下するケースもあります。
職業や生活環境上リスクが高い方は、接種歴の確認と併せて抗体検査を受け、必要に応じて追加接種を検討するとよいでしょう。
2回接種していても感染することはありますか?
非常に稀ですが、約3%の確率で2回接種者でも感染する「ブレイクスルー感染」が起こることがあります。
ただし、重症化しにくく、他人に感染させるリスクも低い傾向があります。
抗体検査と追加接種はどちらを先に考えるべきですか?
記録がなく免疫があるか不明な場合、抗体検査を受けずに直接ワクチンを接種しても問題ありません。
すでに免疫がある人が追加でワクチンを打っても、副反応が強くなるなどの悪影響はないとされています。
母子手帳がない場合はどう確認すればよいですか?
書面での記録がない場合は、免疫がないものとして扱うのが安全です。
不安な場合は医療機関に相談して、抗体検査や追加接種を検討してください。
ワクチン接種歴が不明な人や1回接種の人は早めに確認しよう!

麻疹は感染力が非常に強く、大人が感染すると重症化しやすい傾向も指摘されている感染症です。
特にワクチン接種歴が不明な方や1回のみ接種の方は、まず母子手帳を確認し、必要に応じて医療機関で抗体検査や追加接種について相談してみてください。
家族に乳幼児や妊婦がいる場合は、なおさら早めの確認が安心につながります。
自身の免疫状態を把握しておくことが、自分と周囲の大切な人を守る確かな一歩になります。
麻疹の抗体やワクチン接種歴が気になる方へ
麻疹は感染力が非常に強く、ワクチン接種が予防に重要な感染症です。ただし、過去に接種したことがあっても、接種回数が1回のみの場合や、接種歴がはっきりしない場合は、十分な免疫があるか不安に感じる方も少なくありません。麻疹の流行が気になる時期や、海外渡航・人と接する機会が多い方は、一度確認しておくと安心です。
当院では、麻疹ワクチンに関するご相談に加え、接種歴の確認や、必要に応じた抗体検査・ワクチン接種のご案内を行っています。年齢やこれまでの接種状況、現在の体調などをふまえてご相談いただけます。
麻疹の抗体やワクチン接種について気になる方は、下記ボタンから当院のワクチンの詳細を一度ご覧いただき、受診をご検討ください。

赤松 先生
「患者様ファースト」に徹底した医療マインドを持ち、内科診療にとどまらず健診センターや複数のクリニックを運営。 医療の敷居を下げ、忙しい方々にも医療アクセスを向上させることを使命とし、さまざまなプロジェクトに取り組む。


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